「妖怪ハンター 天の巻」 諸星大二郎著(集英社文庫)。漫画。
妖怪ハンターシリーズの第2集。この巻は,巻頭の話である,日航機墜落事故をモチーフにした「花咲爺論序説」に出てくる兄妹(薫,美加)が何度か登場し,活躍します。
「幻の木」は,瓜子姫とアマノジャクの話にモチーフをとった話。そういえば,瓜子姫の話もけっこう怖い話ですよね。日本の昔話も侮れません。
「川上より来たりて」は,「幻の木」の続編。兄妹が登場します。「天孫降臨」は,富士樹海が舞台になった中編。生命の木をめぐる大樹伝説の完結編にもあたります。
「黄泉からの声」は,皿屋敷伝説をモチーフにしたもので,こちらも中編です。平将門の首塚がちょっと出てきますが,確かにこのあたりもいろんな伝説がありましたね。
「天神さま」は,童歌の「通りゃんせ」を題材にした話で,本巻の中では一番好きな話ですね。昔一緒に遊んでいて神隠しにあった「ちいちゃん」が,文字通りパワーアップして帰ってきます。「ちいちゃん」は,スピンオフで主役にした話を作って欲しいくらいですね。
伝承や伝説,童歌を見てくるだけでも,「美しい日本」とかいう偽善的な言葉では語り尽くせない豊富な源泉が流れているのが分かります。
これをモチーフにして想像力を働かせる諸星ワールド。日本の文化に興味を持たせてくれるのですが,やっぱり教科書や副読本には採用してくれないんでしょうね。

0