「彼方より 諸星大二郎自選短編集」 諸星大二郎(集英社文庫)。漫画。
諸星の短編集。「汝,神になれ鬼になれ」という自選短編集第一弾に続く第二弾だそうです。妖怪ハンターシリーズからは,「天神さま」が収録されていますので,これだけ重なりました。
「生物都市」は,1974年に手塚賞入選を果たしたSF作品。機械と一体化してしまう恐ろしい現象が地球を襲います。
水死体同士が出会う「水の中」は,水死体というおどろおどろしい素材を使いながら,なぜかのんびりした気持ちになれる作品。「ぼくとフリオと校庭で」は,子ども時代を思い起こさせ,郷愁を誘う一編。
「ど次元世界物語」は,不条理コメディーを狙った習作のような感じ。「ヨシコちゃんと首たち」も,絵物語で,習作に近い。
「桃源記」は,陶淵明を主人公にした話で,桃源郷をめぐる話。陶淵明を主人公にした漫画を書こうという人はそうはいませんよね。
「失楽園」にも収録されているらしい「男たちの風景」は,傑作ですね。男性が結婚すると1年くらいして,あっという間によぼよぼのおじいさんになってしまう星を主人公が訪れた話なんですが,かなり強烈な印象を残します。
「カオカオ様が通る」という作品もシュールで印象深い作品です。カオカオ様というどでかい顔に足がついたような化け物が歩いていく町々の風景を切り取ったような作品ですが,死ぬほど感動したっていうのは,こういうことかって思い知らされます。
最後の「砂の巨人」は,
タッシリナジェールの壁画をモチーフにした,アフリカを舞台にした話。諸星の関心が様々な分野に広がっていることがよく分かります。

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