「12色物語」 坂口尚著(講談社漫画文庫)。マンガ。
手塚治虫アニメに関与した坂口の12色の色にモチーフをとった短篇集。
「バージョン」に続いて読みました。
「朝凪」
孤独に暮らす老人と犬を巡る話。静かな余韻を残す。
「ひまわり畑」
野牛のような大男ホセから金を回収するためにやってきた賭博師。タイトルが全て。
「蜃気楼」
戦車戦が繰り広げられる砂漠の戦場。死神と向き合う男の話。といって,それは別に激しい戦闘を意味するのではないというところが坂口らしい。
「紫の炎」
若い恋人達が木に刻んだ印のたどる偶然。
「万年筆」
家を出た父親の残した万年筆。しかし,父は新しい家庭を築いていた。本書の中で個人的には一番印象深く感じた一作でした。
「雪の道」
サーカスでバイオリンを弾く,音楽家志望の主人公。やりたいことを貫いていくのはなかなか難しいものです。あの選択が正しかったのかどうか,ちょっと気になります。
「窓辺のふたり」
恋人を飛行機事故で失ったオペラ歌手の主人公。事故現場で見つけたちぎれた耳を持ち帰るが,思い出が彼を悩ます。別にホラーという訳ではありません。
「ブルックリン日曜日」(曜は,表記は旧字)
ポンコツ自動車を買わされ,いつか走る日を夢見て改造にいそしむトーミーと孤児院を抜け出してたくましく生きる盗人の黒人少年との交流を描いた作品。
「錆びた鍵」
一家毒薬死事件が起きた邸宅を訪ねる老夫婦。当時の事件の真相も絡んで不思議な印象を残す作品。
「マーロのオレンジ」
怪しい男に追われる女性を助けたマーロ。島の一夏の思い出といった趣。
「遁走曲(フーガ)」
妖しい老婆から自動人形を売りつけられたセールスマンの主人公。意外にシュールな話だった。
「夜の結晶」
山で発掘に携わりながら静かな生活を送る主人公。ある日都会からやってきた女性が山で失踪した。自殺志願の可能性があるということで主人公が捜索にあたる。
この話もなかなかよい出来でした。
マンガの短篇っていうのもなかなか面白いなーと思いました。

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