「キングダム/見えざる敵」 ピーター・バーグ監督,ジェイミー・フォックス,ジェニファー・ガーナー,ジェイソン・ベイトマン,クリス・クーパー,アシュラフ・バルフム,ジェレミー・ピヴェン出演(2007,米)。
サウジアラビアの外国人居住区で自爆テロが起き,主人公と仲の良かったFBI捜査官も巻き添えを食ってしまう。
サウジアラビアとしては,ただでさえ対米追随と見られているため,アメリカ人捜査官を自国に招き入れる訳にはいかないと米国の協力に頼らない姿勢を見せる。また,米政府としても派遣には消極的。
FBI捜査官のフルーリーは,独自のルートで4人のFBI捜査官を5日間だけサウジで捜査させてもらう同意をサウジ側から取り付け,捜査に赴く。
彼は事件を解決に導くことができるだろうか。
習慣も文化も違うサウジでの捜査は難航しますが,次第に現地の捜査官とも通じるものができて・・・という流れは,この手の映画の定石ですね。
冒頭,アメリカとサウジアラビアとの関係について,歴史をさらっと辿ります。社会派風アクション映画という感じでしょうか。
基本はアクション映画といっていいでしょうね。アクション映画として見れば,うまく作ったと思います。まあ,定石の部分が多いのですが(他にも現地捜査官の運命,拉致された身内の者の結末とか),それでもうまくまとめていると思います。
けれど,そもそも4人のFBI捜査官で何ができるのか,とか,「ブラックホーク・ダウン」並みの後半の戦闘シーンをなぜFBI捜査官が乗りこえられるのかとか,社会派風な割に映画チックな見せ場というか,ファンタジーが多いところが何だか今はやりの社会派風に乗っただけという印象を与えます。
そもそも,相手が抵抗するのを前提にほぼ皆殺し状態で解決するあたりも,FBIの必要を感じないなと思ってしまいます。
しかし,この映画の皮肉ってなかなかのものです。最後のセリフもそうですが(励ましの言葉と遺言の言葉の一致),あれだけ丹念にたどるように描きながら,結局お前ら一緒じゃん的なまとめ方って,やっぱり皮肉と受けとめるべきなんでしょうね(このあたりの真意は不明)。
そうやって見てくると,確かに今回の作戦も私的な復讐といった様相ですよね。
映画としての立ち位置をもう少しはっきりさせるとよかったかなと感じました。

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