うずまき,
ギョの伊藤潤二の作品集。古本屋にあったものを買ったので,5巻,8巻,9巻。期待しないで読んだのだけれど面白かった。彼の作品は,単なる怖さというよりも,その発想が面白い。発想の自由さには時々笑いがこみ上げる時もある。
こちらも,最近のホラーブームの一環。

「伊藤潤二恐怖博物館5 路地裏」(朝日ソノラマ文庫) 短篇集。
「路地裏」 路地裏から聞こえる子どもの声
「ファッションモデル」 雑誌で見た異様なモデル。映画の撮影に応募してきた中にそのモデルが。面白半分で採用するが・・・。
「落下」 突然消えた人々が降ってくる
「相部屋」 病室で同室となった者たちは・・。
「旅館」 温泉が湧くとの夢を見て温泉発掘に執着する男
「許し」 彼女との結婚のため,なかなかうんと言わない彼女の父を説得しに何度も訪れるが・・。
「煙草会」 自家製の不思議な煙草。黒い味。
「黴」 文字通り。黴に侵食される家。
「道のない街」 なかなかシュールな作品。道が建物に占拠され,民家の中を通らなくては通行できない街。家が半ば道路になっているため,住人にはプライバシーも何もない。住人は唯一のプライバシーのために仮面を付けて生活している。プライバシーの意味を考えさせる傑作。
「記憶」 自分の美しさは本物?醜かった自分の記憶が,疑問を呼び起こす。
「アイスクリームバス」 訪問してくるアイスクリームバスの不思議。この手のホラーは西洋にも多い。

「伊藤潤二恐怖博物館8 白砂村血譚」(朝日ソノラマ文庫) 短篇集。
「墓標の町」 亡くなった場所に墓標が立つために墓標だらけになった町の話。アイディアがいいね。
「仲間の家」 1階と2階が争う幽霊屋敷
「なめくじ少女」 舌がなめくじに。最後のカットが何ともいえない。
「隣の窓」 隣の窓から声をかけてくる女性は・・。
「漂着物」 すごいのが流れ着いたね。
「ご先祖様」 世代を超えて繋がっていく?
「長い夢」 傑作。一夜の夢の中で過ごす時間がどんどん長くなっていく話。永遠の夢
「トンネル奇譚」 吸い込まれそうなトンネル。トンネルは呼ぶ。
「銅像」 皮肉が利いた話。
「浮遊物」 しゃべる浮遊物。その発想がすごいね。
「白砂村血譚」 人里離れた村に赴任した医師。そこには,全身から血を流す奇病が存在し・・。あの根っこはインパクトあります。

「伊藤潤二恐怖博物館9 押切異談&フランケンシュタイン」(朝日ソノラマ文庫)。
押切くんを主人公にした連作と,中編フランケンシュタイン,プラスおまけといった構成。
豪邸に一人住む押切くんを主人公にした連作の方は,不思議な味わい。異次元につながっている館っていう設定はなかなか面白い。
中編の「フランケンシュタイン」は,あの有名な話のマンガ化。非常によく出来ているので驚いた。
その他,短編がいくつか。いや,悪くないですよ。こういうのも。

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