![Dear Pyongyang - ディア・ピョンヤン [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51eyCaI0SGL._SL160_.jpg)
「ディア・ピョンヤン」 ヤン・ヨンヒ監督(日本,2005)。ドキュメンタリー映画。
大阪市生野区で,朝鮮総連の幹部として活動してきた両親の間に生まれた在日の監督が,北朝鮮に尽くしてきた父の姿を通し,その生き方に違和感を覚え,葛藤を抱える自分の姿と父との日々を描く。監督の3人の兄は,帰還事業で北朝鮮に移住し,北朝鮮で家族と共に暮らしています。
びっくりするほど優れたドキュメンタリーでした。観念的な認識は何の役にも立たないことを感じさせてくれます。
以前にも書きましたが,そもそも朝鮮戦争のはるか以前に日本に来ている人たちにとっては,北朝鮮か韓国かなんてことは関係ないのです(そもそも国がなかった)。監督の父が,北に魅せられたのは,純粋に魅せられたからであって,当時の熱狂的な雰囲気から北に殉じようと考えたとしても,それは一つの選択にすぎなかった訳です。
また,親と子の心理に国境が関係しようはずがありません。このおっちゃんを見て,やれ何人だとかいうことにどれだけの意味があるのかと誰だって思うはずです。
そして,親子の対立の問題も,複雑なバックグラウンドがあるとは言っても,我々だってよく見る光景である訳です。
後半は,父と娘の心の交流が描かれます。特に老いることの意味を問う展開には,ぐいぐい引き込まれ,自分自身を見つめ直させられる気がします。
こうして,どこどこの国がどうとか,○○人はどうとか,そういうレベルの話に一体何の意味があるのかな,と自然に気付かされます。
現在,万景峰号も出入り禁止となり,生活物資の送付にも影響が出ていると聞くにつれても,我々の想像力の欠如を悲しまざるを得ません。

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