
「犬を飼うと12の短編」谷口ジロー(小学館谷口ジロー選集第1巻)。マンガ。
選集と銘打っていますが,2巻,3巻はブランカになるので,実質的に選集らしいのは第1巻です。表題作に加え,12編の短編を収録しています。
いずれも凄まじい傑作揃いですので,購入して損はありません。
冒頭の「犬を飼う」がまた,凄まじい作品です。老犬の最後を描いたこれほどの作品を見たことはありません。
この連作が4話。こういう雰囲気を描ききることができるのは,やっぱり谷口ジローだと納得します。
「約束の地」は,ヒマラヤ登頂のスピリチュアルな話。その後の,「海へ還る」も鯨の墓場を見たい主人公と鯨のスピリチュアルな旅を描きます。自然シリーズという感じですね。
そして,「松華樓」では,一転して,長屋の生活を描きます。うまいよなー相変わらず,と思う。
「山へ」は,またぎの話。「凍土の旅人」,「白い荒野」は,いずれもジャック・ロンドンにインスパイアされた作品で,ジャック・ロンドンの作品を読みたい気持ちにさせられます。こうやって文学作品に読み手を誘い込む力というのも谷口らしいですね。
「貝寄風島」は,ぼくの夏休みみたいな話で結末も微笑ましい。東洋ミーツウェスタンな,一風変わった西部劇風の「秘剣残月」も異色作だけれど読ませる。
最後は,「百年の系譜」で,戦争を挟んだ犬との思い出を描く,後味も爽やかな作品で締めくくる。
殿堂入りにしたい一冊になりました。

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