
「今こそ,エネルギーシフト 原発と自然エネルギーと私達の暮らし」 飯田哲也,鎌仲ひとみ著(岩波ブックレット)。
福島原発の暴走を踏まえてエネルギー問題の今を考えるためのコンパクトな一冊。飯田さんは,エネルギー問題の研究者で環境エネルギー政策研究所(ISEP)の所長もしている。鎌仲さんは「ミツバチの羽音と地球の回転」(未視聴)の監督。雑誌「世界」の対談に加筆したものだそうです。
新潟中越地震の際に柏崎刈羽原発で事故が起きており,この事故を受けた耐震基準の見直しでオーケーが出たにも関わらず,今回の事故を起こしたのが福島第一原発です。安全の保障というのがいかに儚いものかと思いますね。しかも,2010年夏には3号機で外部電源が失われるという事故もあった。いやはや,どうなってるのと言いたい。
チェルノブイリの事故は10日で収束したにも関わらずあれだけの被害を与えた訳ですが,福島は未だ先が見えず・・・。10日で収束していたというのは知らなかったです。
本書では,ISEPの出口戦略としての下記提言も掲載されています(8頁)。
@原発震災管理官(仮称)の任命による統合体制の構築
A石棺封じ込め方式への早期転換
B放射線モニタリング(空気,水,土壌,食品)の広域・網羅的展開
C実測および予測データに基づく避難区域・避難対策の全面的な見直し
D被曝被害者の長期追跡・ケア態勢の構築
E恒久的な事故処理機関の設立
F産業への影響把握と対応
G東京電力の全賠償責任と原発埋蔵金(約三兆円)の活用
いずれも不十分なままですね。
今後は,原子力安全・保安院の組織問題が出て来るでしょう。その際,官庁セクショナリズムを踏まえた骨太な検討が必要になる気がします。
原発の寿命が基本40年というのもあまり知られていないことですね。新規の増設がなければ,いずれ原発エネルギーには頼れない訳で,システム自体に永続性がないのが特徴の一つです(しかも放射性廃棄物の処理には半永久的な管理が必要となります)。
そう考えると,必然的に循環可能な自然エネルギーに切り替える必要が出てくる訳です。エネルギーの中央集権型から小規模分散型へというキーワードは押さえておいた方がよいでしょう。
そして,この方針,政策転換にも省庁間の綱引きの要素が出てくる訳です。環境省の権限をめぐる暗闘をこの際よくおさらいしておく必要があるかと思います。
発送電分離の問題とか全量買取制度の問題など,既得権益との摩擦が予想されるテーマがたくさんあります。
我々に必要なのは,「それ」に代わる選択肢への現実的なコミットと支持だろうと思います。

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