
「重い障害を生きるということ」 高谷清著(岩波新書)。
重症心身障害児施設「びわこ学園」に勤務する医師による一冊。割と字が大きいので,さらっと読めてしまう。専門性を極めた一冊というよりは,エッセイに近い。もちろん哲学的な趣きもある。
重い障害をもって生きるというのは,誰が見ても過酷なことです。「根本的には改善の余地がないように思える重い心身の障害のある人が,人生を生きていることがほんとうに幸せなのか」(はじめに)という重い問いかけに,著者が向き合う。
重い障害を抱えた人たちを,人類の障害を引きうけた人類戦士として見る視点は貴重です。
「医療処置でも介護でも,「する人」が「される人」に一方向的におこなうということではなく,「(ケア)する人」と「(ケア)される人」が協力しあって,関係しあって成り立っていくものであろう。」(96頁)
当然といえば当然なんだけれど,こういう視点は重要なんですよね。昔,高齢者介護施設で一日ボランティアをした経験がありますが,例えば食事をとってもらうということにしても,職員の方々はどうしても日々の仕事になってしまい,ある意味ショックを受けました。
確かに時間はかかるかもしれないけれど,単に栄養を摂るんじゃなく,食事の楽しみを味わわせて欲しいよな,と。
これが例えばチューブを入れるということであっても協力関係が挿入のなめらかさに大きく影響するというのは理解できる。これはやはり関わる側の想像力が問われる部分だと思う。
重症心身障害児施設の歴史についてもまとめられており参考になります。
「「健康保険」では「治療の見込みのないもの」は保険診療に値しないとされ,障害児は病院への入院を認められなかった。」(110頁)
そんな馬鹿なと思いますが,そういう歴史があった訳です。
最近では,重い障害に対する取り組みは分かりやすいと思われて敬遠される傾向も見られなくはないですが,こういう機会に見つめ直してみると先人の取り組み(もちろん現在の取り組みも含め)は偉大だと思いますね。
どちらかというと避けていたけれど,一度見学に行きたい。

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