
「遊戯の終わり」フリオ・コルタサル著,木村榮一訳(岩波文庫)。
コルタサルの
短篇集の出来が良かったので,新刊の本書も手に取りました。岩波には珍しいことに,先の短篇集と内容が二つ重なる(「続いている公園」,「夜,あおむけにされて」)。国書刊行会で出版されたものの再版という色合いが強いからでしょうか。楽しめましたが,仕上がりとしては,前作の方がよかったです。
「続いている公園」 略
「誰も悪くはない」
うまく着ることのできないブルーのセーター。不条理の世界。
「河」
セーヌ河のそばで恋人と共に。
「殺虫剤」
蟻を殺すための殺虫剤を基点に子どもたちの世界を描く。最初の3話を読むと何か恐ろしいことが待っているのではないかと思ってしまうのですが,ホラー色はありません。子どもたちの夏の思い出といった雰囲気です。
「いまいましいドア」
ホテルの隣室から夜になると赤ちゃんの泣き声が。
「バッカスの巫女たち」
人気のある指揮者のオーケストラ。主人公はそこまで熱狂せず距離を置いていたが,次第に会場は熱を帯びていく。
「キクラデス諸島の偶像」
掘り出した偶像によって,訳の分からないことを言い始めた友人。フエンテスの「チャック・モール」を思い出した。呪術的な偶像という要素は南米では通底する部分があるんでしょうね。
「黄色い花」
若かりし日の自分がバスに乗っているのを見出した男。一種のパラレルワールドか。
「夕食会」
往復書簡形式の短編。
「楽団」
映画を見に行ったはずだが,思わぬ楽団が現れ,異空間が現出する。
「旧友」
殺し屋。
「動機」
復讐のために追いかけた男。
「牡牛」
ボクシング。「旧友」,「動機」,「牡牛」の3作とも,いずれも一人称の独白スタイル。コルタサルの短篇はこのスタイルが多い。
「水底譚」
川辺の水死体
「昼食のあと」
あの子と一緒の遠出。あの子って一体誰,何(動物,人)なんだろう。最初は動物かと思ったけれど,どうも子どものようだし,ややぼんやりとしている。
「山椒魚」
水族館の山椒魚の神秘に魅入られた男。オオサンショウウオではないです。
「夜,あおむけにされて」
略。
「遊戯の終わり」
鉄道沿いの家に住む,3人娘の遊び。列車から3人を眺める男の子。
パターンが一定していないので,怖いもの見たさみたいな気持ちで読み進めたため,雑多な印象を受けました。

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