
「西遊妖猿伝 大唐篇」 諸星大二郎著(講談社)。マンガ。
諸星大二郎の代表作。全10巻。続刊として,西域編が連載されています。西遊記を大胆にアレンジした作品で,アクション巨編になっています。
大唐篇では,悟空と猪八戒は出てくるものの沙悟浄はまだ出てきません。このゆっくりとした展開が大作と言われる所以の一つでしょうか。
ゆっくりとした展開とは言うものの,それはあくまで天竺へ向けての話の進め方のことであって,マンガとしてはテンポよく進み,諸星作品であることを忘れてしまいそうになります(本来は,これが諸星作品なのかもしれませんが,諸星作品のうちでも他の作品を読んでから,最後にこの作品を読むことになったので,随分と印象の違いを感じます)。
悟空は如意棒を振り回すものの,キン斗雲(きんとうん)には,乗りません。また,石猿でもなく,普通の人間です。硬派な青年といった感じで,時折,齊天大聖の毒気にやられてとんでもない力を発揮します。何かが発動するといった感じで,このあたりの感覚は現代的だと思います。
諸星作品を読んで思うのは,登場人物の感情が意外にシンプルだということ。ドロドロした展開にはしませんし,登場人物の悪意みたいなものもほどほどで,こういったあたりは著者の人の良さを感じます。
こんな中,猪八戒だけが毒を吐きながら,へたれながらもマイペースを保っているのが,バランスとしてはよいのかもしれません。

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