

「首のない彫刻(伊藤潤二傑作集7)」 伊藤潤二著(朝日新聞出版)。マンガ。
伊藤潤二の短篇集の再発。持っていなかったので購入しました。12篇の短編が収録。爆発力はもう一つ。でも,持ち味の不思議な冷めた感覚を味わうにはやっぱり過去の作品でしょうね。相変わらずシュールです。
「赤い糸」
行き場のなくなった運命の赤い糸は・・・。不条理にも関わらず健気に生活を送る主人公がいいね。
「中古レコード」
いわく付きのアナログレコードをめぐる話。意外に,歌がほのぼのとしているのに笑える。アナログレコードの収集家は読むべき短編でしょうね。
「贈る人」
催眠術の効果。木彫りの人形を配る青年。こちらもシュールですね。
「橋」
橋の側に住むおばあちゃんから連絡が来た。昔からの村の葬送儀式が絡む話。この話も死者を板に乗せて川に流して,途中でひっかかって落ちるという,笑ってしまいそうな事態を絡めている。このユーモアセンスは伊藤潤二作品のキーですね。
「サーカスが来た」
団員がだめだめなサーカス。怖さよりも,おいおいという感じが漂う。
「蜂の巣」
蜂の巣を集める主人公。蜂の巣をめぐって熾烈な戦いが繰り広げられる。
「地図の町」
やたらと地図がたくさん掲示されている町。ここに住むと地図なしでは生活ができなくなるという。お宝発見イベントがあるというのもシュールですね。
「首のない彫刻」
首のない彫刻を作っていた教師が殺害される。彫刻の動きが何とも・・・。
「薄命」
美人薄命という病。君はかかりたいか,この病。相変わらずシュール。
「寒気」
うむ,確かに寒いだろうね。
「案山子」
墓地に案山子を立てたところ,死者の顔立ちに似た顔が。お墓では案山子がブームになる。
「遺書」
もらい子の妹が恨みを書いたメモを持って自殺する。しかしメモには血が滲み,誰の名が記載されていたのかが分からない。直前にケンカをしていた家族は恐怖にかられる。
こうやって書いてくると,やっぱりシュールでユニークですね。怖さうんぬんよりもその設定の奇抜さに目を向けるべきでしょうね。

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