
「
ジャマイカ 楽園の真実
」 ステファニー・ブラック製作・監督(アメリカ,2001)。
アルトンさんのサイトで知って見ました。レゲエと常夏の島ジャマイカ,行ってみたいけど治安は悪いらしいジャマイカ。そんなジャマイカとIMF,世界銀行などのグローバリゼーションとの関係を,えぐったドキュメンタリー。
非常に重要なメッセージを含んでいる。
ジャマイカが独立したばかりのころ,経済は安定しなかった。マイケル・マンリーは,国の苦境を救うためIMFと契約を交わし,融資を受ける。しかし,最近明らかになっているように,IMFの融資はひも付きで,結果として自国の経済は荒廃していく。
マンリー自身も出演し,最大の汚点だと述べています。
ぼくは,グローバリゼーション=悪だとは断定しない。国富論を読んだ手前,市場の拡大自身が悪いことだとは断定できない。しかし,いわゆるグローバリゼーションの問題は,「公正な取引」ではないことが重要なポイントだ。つまり,自らの産業を保護しようとする保護主義的な政策を実質的には取りながら,市場の公開を言うところが問題なのだ。
同時に,農業について市場化を過度に強調することも問題だと思う。
つまり,農業には,基本的な投資が必要であるとともに,収益を上げるためには一定の期間を要するから,これを保護することが不可欠だ。そうでなくては,従事者はいなくなる。また,食料は国の安全保障の一環でもある。さらに,貨幣価値との関係でいえば,食料だけは通貨の変動に耐えられる(なぜなら,人はそれなしには生きていけないから。逆にそれがあれば何とかなるし,基本的に必要な労働力は決まっている。)。
公正な取引ではないというのは,巨大な企業群を既に形成している以上,長期戦に耐えられるのに対し,零細業者はこれに耐えられない(たとえば,当面の間大幅な値下げをして攻勢をかけておいて,相手の体力が弱くなってから,値段を上げれば零細企業はふっとぶ。)。また,本作にも出てくるけれど,大企業故に,労働力の安価な地域の労働者を使うという方策もある(零細企業には,このような選択肢はそもそもない。)。
フォトライブラリーの最後にこんな言葉があった。“Our Resistance must be as global as capitalism”(「我々の抵抗は,資本主義と同じくらいグローバルにならないといけない。」)
フェアトレードを押し進めていくことも重要だけれど,加えて不正の実態を明らかにしていくことが求められる(例えば,中国での労働力の活用が一つのマーケットになっているが,現地のみならず最低限母国の勤務条件や法律の規制を受ける仕組みは必要だろう。)。さらに,世界的なルールとして,独占禁止法類似の制度を作って,公正な競争たるに相応しい枠組みを作っていくことも必要だ(国際ルールへのアメリカの対応を見ていると,これに従うかどうかは,微妙だけれど,そんなんならグローバリゼーションを言わなければいい。)。
特典の対談で,国際問題評論家の
北沢洋子さんという方を知った。「
利潤か人間か ― グローバル化の実態と新しい社会運動
」という本の著者らしい。機会があれば読みたい。

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