で,3回目の今回は,
ダン・ブルーメンソールのアジア概況について。
この分析は非常に参考になる内容だった。日米関係の最近の動きを拾っているし,ネオコンと呼ばれるAEIの分析官でも,これだけの分析をする(つまり,情勢を無視してファンタジーのような話をする訳ではない)という意味ではアメリカの情報力を感じる(ちなみに彼は父ブッシュ政権下で国防総省の専門職員)。
アメリカが日本をターゲットにして,中国との関係改善を図ったり(これにより日本の焦りを引き出すのが狙いだった),中国側の対応に対し脅威と感じて対米依存が増えていく構造など,エネルギー問題や台湾問題をめぐる大国間の利害の狭間に日本が漂っているのがよく分かる(この大国間の小競り合いが,日本に庇護者を要求させてしまうという副次的な効果がある。)。
ミサイル防衛にしても,米国製のシステムの導入により,基準の統一化が可能になり,軍需産業の協力にも繋がるし,ミサイル防衛が即時の判断を要するから作戦統合の色合いも強くなり,アメリカにとっても自国防衛の一環を代替してもらえるというメリットがあること,最終的には中国のミサイルもターゲットにしていることなどを臆面もなく述べる。
中国が憂慮しているのは,ミサイル防衛システムの能力ではなく,日本と米国の一体化であるということ。特に,台湾問題をめぐって中国を牽制し,ゆくゆくは日米と台湾との軍事的な統合も図りたいと狙っていることなども述べられる。
ここに描かれるのは,国益をめぐる水面下の戦いである。台湾問題は,今後の日中関係を巡る重要な視点になりうる。たとえば,安倍についても親台湾派であると分析する(こう考えると麻生の発言も意図的だった疑いがある。)。
中国にとっての台湾の意味合いについては,自分はまだ分析不足だが,あえてこの問題に踏み込むのはまさに他国の紛争に首を突っ込むことになりかねない。
衝撃的だったのは,靖国問題に対する分析。小泉は,アキレス腱であった歴史問題を政治的な利点としたと指摘しています。つまり,靖国参拝によって中国の反応を引き出し,安全保障体制の変革に対する世論や中国側の反発を抑えたという訳です。
なるほど,これは対抗勢力を作り出すという小泉政治の文脈からは分かりやすいですね。対抗勢力をわざと作り出して,世論を操作する。そういえば,小泉自身総理になるまでは一度も参拝したことがなかった訳ですからね。
こうやって見てくると,いわゆる嫌中感情も意図的に惹起させられているということが分かろうというものです。
こういう各国のスタンスに加え,各国の利益も絡んでくるのが国際政治の世界です。利益線を守るためであれば,紛争も辞さないという意図が働くおそれがある。誰が一番得をするのか,そういったところまで見据えて腹黒く考えて行かなくてはいけません。で,これと先の安倍氏の議論を比べると,あまりのお粗末さに,さらにこの国の将来が心配になってくるわけです。

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