
「変身」 チャットモンチー(Ki/oon Records)。
ドラムのクミコンが脱退して二人になったチャットモンチー,通算5枚目のアルバム。初回限定版には,スタジオライブを収録したDVD「変身中」が付属。
思えばチャットモンチーを最初に聞いた時から何かを感じた。正直最初はあまりうまいとは思わなかった。はずれかけの声に荒削りさを感じた。でも,その音作りにロックの魂を感じた。あのときに感じたものは間違っていなかったということを,ずっと実感しながら来ています。幸せですね,こういうの。
12曲収録の本作は,シングル曲などの既発表曲が6曲。ファン的にはどんどん新しい音を聞きたい訳で,6曲が新曲かとちょっと残念な気持ちになるのですが,このアルバム収録曲が期待を裏切るよい出来です。
「初日の出」は,オルタナな雰囲気でしびれる一曲。実はアルバムを聞く前に添付のDVDを見たんですが,衝撃的でした。「ぼくらの音楽」で二人で演奏する「染まるよ」を見ていて,ボーカルのえっちゃんがドラムをポンポコ叩いているのは見ていたんですが,まさかドラムに本格参入しているとは!
DVDでは,曲だけでは分からない演奏風景を見せたいがために,そういう曲を中心に選んだという話をしていましたが,確かにすごいDVDです。彼女たちのロック魂が炸裂で,海外のロックファンたちにも自慢できる一枚になっています。ホームステイをする日本人学生は必携でしょうね。
おっとかなり脱線しました。二人になった。ドラマーがいなくなった。二人でいろんな楽器を演奏していますってなノリは日本の音楽界で通用するんだろうか。
こういう根源的な問いかけをするレボリューショナルな挑戦ともいえますね。そしてそれにふさわしい曲だと思います。DIY精神を体現する取り組み,君たち,それこそオルタナミュージックというものだよ。なんか神を見た気がします。
本作ではサウンドプロデュースも基本的に二人でしています。
「歩くオブジェ」は,弦楽器をフィーチャーした壮大な曲。人間賛歌でもあります。本作では伝わってくるものがとにかく熱く,前向きですね。
「ウタタネ」もおそろしいナンバーです。この歌詞世界には,成長を感じます。
なお,両A面だった,カバー曲の「夢みたいだ」は外したんですね。全体的なバランスからでしょうか,権利面でしょうか。
総評として言うと,ぼくにとっては本作がチャットモンチーとしてのベストアルバムですね。一人少なくなることによって,二人の何かが活性化して思いもよらぬものが現れてきている。そういう意味では,まさに変身中,変容中,いや進化中という感じでしょうか。
音的に薄くなったとかいう批判を目にすることもあるかと思いますが,個人的には全くのナンセンスだと思います。この二人ならアカペラでも十分です。また,オルタナ界の雄ペイブメントは,スカスカのドラム故に魅了しました。ここまでの決意のこもった,それでいて自然体のアルバムっていうのは,聞いたことがありません。
とにかくこの歴史の現場を見るためにはライブに行かなくてはなりませぬぞ,皆さん。

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