広島市現代美術館で
ス・ドホ展(DO HO SUH in between)を見ました。
現代美術は,鑑賞者との間の対話だということが分かってからは,現代美術のダイナミックさに魅せられています。
ス・ドホは,韓国生まれの現代芸術家です。名前は知らなかったけれど,展示作品の概要を見て足を運びたいなと思いました。
実際に足を運んでみて,そのスケールに圧倒されました。
最初の作品は,「墜落星−1/5スケール」。5分の1のスケールにミニチュア化されたアパルトメント。ドールハウスのように輪切りにされています。内装や装備品の細かさもさることながら,冷蔵庫まで輪切りにされているのでなかなか凝った手法だな,と感心。
ふと目を移すと,右手の部屋では瓦礫が積み重なっている。崩壊?と思って後ろにまわると,伝統的な韓国の家が突っ込んでいる。屋根からは赤い糸が伸びていて,パラシュートにつながる。
おお!韓国の伝統家屋がパラシュートを付けてニューヨークの建物にぶつかってきたのか。
つぎの作品は,「家の中の家」で,等身大の青いビニールの網のようなもので構成された家。全てがビニールの網のようなものでかたどられていて,透けて見える。建物本体が溶けて繊維だけが残ってしまったようにも見える。建物の内部を歩くことも可能で,角度を変えて体験をすることができる。
次の展示に向かうと,階下に向けて,鉄の網のようなものが見える。下に降りてみると,金属製の人型がつながった網であることが判明。「ネットワーク」と名付けられた作品だけれど印象深い。
また,同じテーマで透明の床を無数の人が支えて(床材のように配置されて)おり,その上を歩くことができる作品も。
業(カルマ)と名付けられた作品は,男の上に次から次へと人が重なり合い,それぞれが目隠しをしているという作り。ちょうど本体の男がとんがった帽子状のものを頭に頂いているように見える。
また,「サム/ワン」では,鋼鉄のガウンが展示されているように見えるが,目を凝らすと軍隊の識別票(金属製のプレート)で構成されていることが分かるという作品もある。非常に皮肉の効いた作品だと思う。
平和へ向けたメッセージは,「落下傘部隊」という作品にも共通する。無数の赤い糸がパラシュートにくくりつけられ,それを持つ軍人の姿を現した作品で,無数の赤い糸が光を反射して何とも美しい。糸の先は,パラシュートに縫い付けられた人名の刺繍につながっている。
明確な意思をもって作成されながら,見る人に驚きとイマジネーションを与える作品群は現代美術を気軽に楽しみたい人には絶好の機会だと思います。特に,図録や写真では味わえない,自ら体感,発見する作品の魅力は展示に立ち会ったものだけが味わうことのできる究極の贅沢といえるでしょう。
10月21日までの展示だけれど,近くに立ち寄った際には是非訪れるべき展示といえます。

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