ACT3 甘くて熱い召しませチョコ
バレンタインになった
くるくると色々あれこれ考えて、チョコフォンデュを習ってくる。
無理矢理、凛も連行。
「ちょw美紀姉さん、私行っても相手居ないし・・・。」
ごちゃごちゃなにか言ってます。
「チョコの後は、健康ランドで遊べるデスヨ。」
ぴくっ、と凛が反応。
何せ凛はお風呂や温泉が大好きで、国内の家族旅行先に温泉がないと拗ねるほど。
「それに、凛に任せる方は、にゃんこ結社の団員さんの分なの。だからお願いダヨ〜☆」
「し・・・仕方ないですね、じゃあ一緒に行きますよ。まったくもぅ・・・。」
文句良いながら、心はきっと健康ランドをどう遊ぶかになっているのだろう、ニコニコしている。
教室の中は、甘いチョコの香りがむせかえる様に、周囲に甘い香りが立ちこめている。
チョコフォンデュの基本的な手順とここで食べる試食のチョコと。
当日と試食に使うフルーツの下ごしらえと、当日用のチョコフォンデュ用のチョコを刻んだり溶かしたりする。
沢山の女の子達が色々試行錯誤していた。
恋人に食べさせたい子や、告白相手に食べさせたい女の子達の熱気に、凛は少し困ったように当てられていた。
「たはは、チョコ以外にもあまったるいオーラが・・・。」
小声で呟く独り言は、周囲の女の子達による、恋の話にかき消されてだれにも聞こえないだろう。
「雷人君・・・よろこんでくれるかなぁ・・・きゃっ。」
とか呟く姉もその一人だ。
苦笑を浮かべつつ、姉の幸せそうな横顔に一安心する。
きっと幸せな恋なのだろう。
姉は人が良いから、気に入った相手は確証もなく、盲目的にいい人と思いこんでしまう。
恋人でも友人でもだ。
ちょっとそれを心配しながら凛は思う。
表面上だけのいい人や仲間なんて沢山居なくても良い。
姉にきちんと向き合って、姉を幸せな笑顔で満たしてくれる者が、
周囲にすこしでも居てくれれば、姉はささいな事でも喜ぶのだろう。
そんなことをつらつらと思いながら作業は完了。
完成品を試食した後、我らに温泉が待っていた。
「うわぁ〜最近の温泉って・・・すごぉ〜い。」
キョロキョロと、色々な種類の温泉を楽しそうに美紀は眺めていた。
「うんうん!美紀姉さんもはやくはやく。」
凛のテンションが格段に上がったのは美紀にも分かった。
「ほんと、凛はお風呂大好きダヨね。」
くすくすと笑う。
だが凛はもう側から離れて身体を洗い始めている。
「折角だから背中の流しっこしようか。」
その言葉に凛は満面の笑顔で頷いた。
温泉はハーブがはいっていたり、ワインが入っていたり。
リンゴや薔薇が浮かんでいたり。
お椀の大きな物お檜や岩風呂露店やサウナなど、何種類ものお風呂があった。
それを端から端までまわろうと凛は頑張っている。
流石に美紀は、長湯が慣れていないので、休み休み入る。
それでも一時間もするとぐったりしてしまい、先にギブアップして休憩場でイチゴミルクとか飲んで凛を待っていた。
それでも戻ってこないので。
椅子でうとうと、うとうと。
出てから一時間位して凛が戻ってくる。
「わ、姉さん、ゴメンつい夢中になってしまったわ。」
ぽえぽえと寝ぼけながら、美紀は笑う。
「うん、慣れてるぅ。」
そういって、椅子の近くにしゃがんで覗き込む凛の頭を撫でた。
温泉に行くと凛は必ず長湯だったので、ほんとうに慣れていた。
「そろそろ帰ろっか、パパがさっき迎えに来るってメールで言ってたよ。」
「あ、本当?じゃあパパの車・・・アレかな?」
「アレでしょ?にゃんこカウンタック。」
元レーサーの、父のコレクションの一つが、
ボクらふたりに改造されて緑色でなおかつニャンコの顔がばばーんとあったりする。
来年からボクが乗る予定になっている車。
「珍しいね、パパが来るなんて。」
呑気に言う美紀に聞こえないように呟く。
「そりゃ・・・姉さんがどんなひとにチョコを上げるのか、自分の分もあるのか聞き出したくて仕方ないのよ。」
仕事で滅多に家にいない父がムリしてでも来た理由に、美紀は鈍くて気付かない。
結局、普通にセドリックでやってきた。
理由は流石に二人をお迎えに行くには、スーパーカーは狭いと言われた。
そりゃそうだ。
でも多分それよりも、赤いカウンタック緑色にされて、さらに猫の顔がついたファンシィー仕様は、
乗るの抵抗有るのでしょうね。
見たとき吹いてたし。
バレンタイン、やはり父親は気になるようだ。
そのあと、車でやっぱりバレンタインの相手を必死に聞き出そうと。
パパは遠回しに美紀に色々話しかける。
けれど、遠回しすぎて全然会話の疎通が出来上がっていないなぁ・・・
と凛は苦笑を浮かべながら、二人の話を聞いていた。
ババ・・・ファィト。
翌日、ボクはちゃ〜んと雷人君に渡したヨ。
喜んでくれたみたい。
よかった・・・。

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