タニモトさん夫婦と別れ、千葉から神奈川県小田原に向かう。
この日はアリタケさんのお弟子さんでもあったS山さん宅に泊めてもらう。
翌27日、ここから近くの山に向かう。
こちらは、カギバモドキの幼虫がいるらしいという情報を得ての調査だ。
カギバモドキ幼虫のエサはヒメシャラとナツツバキ。
目的の場所には、ヒメシャラがあるという。
ところが、そもそも、私はヒメシャラを見たことがない。
現場では、S山さんと2人で、ネットからプリントしたヒメシャラの画像を見ながら、
「これかな?」
「いや、樹皮が違うよ?」
などど、頼りないやりとり。
それでも、ヒメシャラに間違いない、という木を見つける。
樹皮はつるつるで茶色。これだけで結構わかりやすい。
一度わかると、次々とヒメシャラが見つかる。
昨日と同じように、手で届く所の葉を次々に見ていく。
しかし・・・・幼虫は見つからない・・・
今日も無理のようだ。
もともと、カギバモドキは幼虫なら9月に入ってからの方が良いだろう、と蛾の大家には言われていた。
その忠告に従わず来た私にも責任があるが、まあ、下見できれば、という気持ちもあった。
それでもあきらめきれずに、一度見た木の下へ。
すると、小さな枝が折れて山道に落ちていた。
拾い上げると、カイガラムシのようなのが葉に付いていた。それを眺めていると、枝に小さなイモムシが・・・
ん?
尾角がある!!
あきらめていたカギバモドキである!!
おおおおおっっっ・・・・・
なんということだ。
さんざん葉を見ていたのに、落ちていた枝にいるとは!
しかも、葉の裏を一生懸命見ていたのだが、こいつは、葉ではなく、葉柄の根元にいつもいる。
なるほど・・この形は枯葉に擬態しているのではなく、枝だったのか。
これで一気に元気になり、S山さんとさらに枝を探す。
この1頭は若齢だし、万が一寄生でもされていたら、それで終わりである。
できれば、あと2,3頭は欲しい。
下見でもいいや、と思っていたのに、人間は強欲である。
しかし、幸運の女神は2度は来てくれかなった。
朝から昼過ぎまで、昼食も取らずに、葉と枝を探し続けたものの、追加は出なかった。
それでも、虎の子の1頭!!
日本産カイコガ科(偶産種を除く)最後の砦であったカギバモドキの繭が手に入るかもしれないのだ!

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