2日目の夜・・・ホテルで休む間もなく、Kさんの車で再び森へ。
ライトトラップは昨夜とは違う場所だ。
点灯してハグルマヤママユを待つ。
午後7時15分過ぎ・・・・
最初のオスが飛来・・・
7時半を過ぎると、次々と飛来する。
ピーク時には、一度に5頭ものハグルマヤママユが幕の周辺を飛び交うというまさに夢のような光景であった。
結局、午後8時半までに約30頭のハグルマヤママユが飛来した。それもすべてオス。
こうなると、昨夜のメスはとても貴重である。
さて、ライトトラップに飛来した蛾の中で、ハグルマつながりで1種。
ハグルマノメイガである。
図鑑では見ていたが、メイガとは思えない雰囲気の美麗種だ。
感激していたのだが、脇からKさんが、
「極めて普通な種です」
・・・う〜ん、でも、いいのだ。嬉しいんだから!
ハグルマヤママユは律儀にも午後8時半を過ぎるとまったく飛来しなくなる。
午後9時でトラップを切り上げ、森の中へ行くことにする。
目的は、ヤンバルクロギリスである。
ヤンバルクロギリスは、本島北部に生息する体長4センチ近い巨大なコロギスやカマドウマに近い種。巨木の洞の中にいるが、夜になると出てくるという。
この時期、夜、林道を走っていると、路上をあるくクロギリスを見つけることができるというから、走らないわけにはいかない。
夜の林道をゆっくりと、そして路面に注意しながら走る。
しかし、雨が降り出し、光る夜の路面で黒い虫を探すのは容易ではない。
時折、見かけるのはヘビの仲間。
こちらは、リュウキュウアオヘビ。
緑色が美しい。
アカマタは3回ほど見ることができた。
写真の個体は最も大きかったもの。胴体は女性の手首ほどもあった。
林道を走っても走っても、クロギリスは見つからない。
ここで、Kさんが、かつてクロギリスを見たことのある巨木に行ってみようと提案。
雨の中、さらに森の奥深くへと進む。
午前零時を過ぎた頃、車は林道のとある場所に止まった。
Kさんが指さした方向には、雨と霧で霞んではいるものの、壁のようにそびえているシイの巨木があった。
巨木までは10mほどか・・・
深夜のやんばるの森の中、斜面を下る。
一人だったら、絶対に出来ないだろう・・・
先に降りていったKさんが叫ぶ。
「いましたよ!外に出てます」
雨で濡れた斜面を転びそうになりながら巨木の下へ。
Kさんが指さした大木の幹には、黒光りしているヤンバルクロギリスがいた!
深い森の巨木の洞に棲む、神秘的なクロギリス。
霧に包まれた森の中で、感動の一瞬である。
しかし・・・・
次に発せられたKさんの言葉に、感動は恐怖に変わることとなる。
「すぐそばに、オオゲジが2匹いますね」
ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・・・ゲジー?
しかも、オオゲジっ?
ちらっとクロギリスの斜め上を見ると、10センチ近くもありそうな(実際は6〜7センチらしい)巨大なオオゲジがクロギリスを守るように鎮座しているではないかっ!
正視することもできず、おびえるしかない。
しかし、クロギリスをなんとかせねば・・・・
そっと網を差し出す・・・
万が一、オオゲジが落ちてきたら、まともに私の顔に落ちてくる位置である。
Kさんはおびえる私を見て、ニコニコしている。
クロギリスの先に網を差し出し、後ろから枝で追い出す・・・・
クロギリスがジャンプすれば網の中に入るという寸法だ。
が、クロギリスはとことこと歩きながら、網と幹の隙間をすり抜け、洞に入ってしまった。
洞は巨木の下まで続いている。残念ながら、採れる可能性はない・・・
気がつくと、オオゲジもどこかに行ってしまっている。
一気に、体の力が抜けた。
神秘的なやんばるの深夜の森で見たヤンバルクロギリス・・・
採集はできなかったが、悔いはない・・・
興奮が冷めないまま、ホテルに戻ったのは午前1時半過ぎ・・
すぐに今日、採集した虫たちの整理は撮影・・
しかし、昨日の寝不足もあり、3時半頃にダウン・・・
夢にクロギリスとオオゲジが登場するかもしれない・・・

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