65年前の今日の札幌で  青年寄宿舎

昭和16年5月の寄宿舎の日誌から

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二十三日(金)
O君退院さる。舎生として、一人の人が増したことは嬉しいことである。夜コンパ、特別室にある。曇天にて、異郷の身の財布も少々氣持が悪いらしい。
昨夜の決算で、一人三〇円余。石炭、薪炭代として七円あるから止むを得まい。食費は余り高くない所から食事部の人には感謝する。自轉車の使用にも電話と同様三銭頂戴さるべく、Yさんが申し出ず。
T君「牧笛」のことで文藝部を招集する。エッセンを喰ひに行ってその熱心さに、感嘆。小生の当時の無責任が恥ずかしい。結局、小生の「ずぼら」の致す所か。
H君が今日コンパの席上で、皮膚科の検査を脱れたことを語れば副舎長のYさん始め角帽の諸君情けなき表情を示し居る。角帽になると、兎角、信用を失ひ勝になるのだろうか。さもあらばあれ・・・。○○○都、春ともなれば、夜の暗い路をさ迷い歩む二人連がれ○○○受けられて、羨ましい。  (独尊生)

二十四日(土)
天気ハアマリヨクナイガ大掃除ヲヤルモノ、二三アリ。ドウシタモノカコノ二三日割合ニ寒イ。イツマデタッテモ、アアタカイ日ガ来ナイノガ実ニイヤデアル。東京デハモウ氣ノ早イ連中は水泳ノコトヲ考ヘテヰルノニ。二十二日ニシメキッタ牧笛六十五号ハ今日製本ノ運ビニイタリマニ入ッテ、一人製本ニ努メ第一部、二部共に出来上ル。割ニ上手ニ製本出来タノデ、昔トッタ杵ヅカトハイヘ嬉シカッタ。八中の頃アノ家デキタナイ道具ト紙ノキレハシの中デ製本ノ手ツダヒシタ時ノコトガ思ヒ出サレテ懐シカッタ。
第一部、二部ニワケタ理由ハ二ツアル。自分ガ製本スルニ薄イ方ガヤリヨク永持チスルコト。廻覧スルニ都合ガイイコトデアル。又コノ前のソリノネノヤウニ、ナクナルヤウナコトガアルバアヒ、一冊ノコレバ、マズイイト思フ。
寒イ寒イ 実ニ寒イ。  TK

二十五日(日曜日)
本日は日曜で、皆朝から熱心に大掃除をしてゐたらしい。といふのは我が三号室の住人共は疊をたヽく音で熟睡の夢を破られたから。掃除しようと思って大いにハリキッタ分でもないんだが、兎に角仕度をしたら雨が降ったのでやめてしまった。今日は昨日に引續き朝から猛烈に寒い。札幌は季候が悪いと聞いてゐたが、実にその悪さも徹底してゐる。晝は岡本君のお母さんより戴いたお菓子でコンパ。晝飯を昨日の中にたべてしまった人々が多かったので大助かりであったであらう。午後別に変ったことなし。夕食後映画に出かけた人が相当多いらしい。牧笛はもう大分皆によまれてゐる様だ。 (K生)

二十六日(月曜)
本日も曇天。北海道の陰鬱な寒い気候を一面から考へれば決して陰鬱でもなく身を引込ましめる寒さでもない。
獨逸や英国や北フランスのある北欧の地方は一年中晴れることの極めて少ない約半年は全く曇天の下にある寒い地方である。日本人が考へればそれは北欧の陰鬱である。然しそこに見られる文化は偉大なものである。南欧に見られぬ偉大(・・)な(・)もの(・・)はこの陰鬱な風土と離して考へられない。北國的な性格を作り上げて行くのに北海道に住むのは意味あることである。寒さに対しては張切りの気持を持ち、曇天に対しては深いものをみつめる気持を持てばこの札幌が魂を育て上げる地ともなろう。(以下略

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昔の札幌の5月も結構寒かったようだ。
寄宿舎のテニスコートを、みんなアルバイトと称して整備しているのが、あちこちに出てくる。大掃除は年一回だったような気がする。

写真の高いビル西6丁目の札幌センタービル、その奥が伊藤邸、左が植物園。
伊藤邸の向こうに寄宿舎はあった。
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