うつに効く手仕事  林とこころ

久々にいい天気なのにほぼ一日中家に居てすごす。夕方、糸井公園に出かけてドロノキに寄りかかり土手に寝転んだりした後、銭湯でしばし汗をかく。思えばわたしは風呂などでリラックスすることを40代半ばまで知らなかった。いや、体をリラックスさせること自体を知らなかったといっていい。これは出来るようになってからの実感である。だから病的だったなあ、とかつてを思い出すのだ。辛い日々に、どこか日常の抜け道があるはずだな、と探していたときにふと見つけたのが、この銭湯とサウナの時間だった。高温と水風呂の低温。このころから風邪を引きにくくなった。人生、日々、発見である。

 一昨日の夜、拙著『林とこころ』の出版を祝って下さるこじんまりした会があって、そこで数ヶ月ぶりに養蜂家でメロン栽培家のSさんとお会いした。Sさんはわたしにとってはファーブルのような人で、生きた生物学というか、ミツバチやメロンを中心にしてみた生物世界を、例えばミツバチにとっての雑木林や原野の意味などを実に立体的に描いてくれる先生なのである。

 そのSさんが言う。「あんたが本に書いているように、達成感は確かにうつ病を治すね。この前から、うつ病の人をメロンのハウスで預かっていたんだけど仕事を始めて間もなく治っちゃったんだ。仕事のあとがはっきりわかるあの達成感がいいみたい」。そうなのだ。林道の雑草を刈るような瑣末な手仕事の良さは、50m、100mときれいに仕上がった結果が見える達成感だ。それがどんな意味があるか、あとで評価が出てくるけど少なくともすっきりしたり、畑仕事の植え付けであればとにかく生産の第一歩が始まって蓄積されていくというそれだけ。それでいいのだ。

 そしてわたし。「そうですよね、あの手仕事って庭の草むしりだって病んだこころに効きますよね。奥さんを亡くした友人が最も癒されたのは土いじりだと言ってた。結局、土ではないでしょうか。地べたの手仕事。だからSさんはいつも前向きで元気いいんだと思うし」。

 「そうだよな」とSさん。畑仕事でうつが治る。林の仕事でもうつは治るかも。畑仕事は畑をもたないと気軽にみんなが出来ないが、せめて林の散歩が出来るようになればいい。こぎれいな林、歩いてみたくなり、歩くとちょっと暗い気分が晴れる道、そんな仕掛けを作りたいと切に思う。
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