
今年の1月号の芸術新潮
「各界を代表する68名が強く推す、驚きと納得の日本遺産・・・」

漫画家の近藤ようこさんが「日本の絹」を日本遺産に挙げています。写真の繭は近藤さんが自宅で飼育した繭です。
近藤さんはNPO川越きもの散歩の会員でもあり、昨年の「埼玉の養蚕を知る」シンポジウムでもパネラーとして出席していただきました。
近藤さんのエッセイを一部紹介させていただきます。
「日本人が飼育をしてきた動物で、蚕ほど研究され品種改良されたものはないだろう。
明治時代には千種以上の品種があったそうだ。江戸時代に出版された研究所はシーボルトによってヨーロッパに紹介され、各国で翻訳された。開国以降、生糸は日本の近代化を支える輸出品の中心になった。
その日本の蚕が作る、日本の絹は今や絶滅寸前である。絹の国内全消費量の1パーセントくらいらしい。着物の反物を見ると、端に「日本の絹」というスタンプが押してあるが、これは日本で加工されたという意味で、糸の原産国は中国やブラジルなどだそうだ。
質がよくて安価な外国産で間に合うなら、もう国産絹は必要ないかもしれない。実際、これから産業としての養蚕を再興させることは無理だろう。しかし、せめて文化としての蚕と絹は生き続けてほしい。日本が誇るバイオテクノロジーの遺産として。」
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あまり知られていませんが、今年で養蚕農家への繭代補助が打ち切られます。繭代の9割が補助金のため、来年養蚕を続ける農家は激減することが予想されます。
私たちが2年前から養蚕見学会でお世話になっている秩父の養蚕農家、宮崎さん、久米さんたちも、来年の対処に悩んでおられます。養蚕文化を秩父の暮らしの中に残したいと奮闘されている農家を応援したい、というのがNPO川越きもの散歩の原点です。着物愛好家の方には素材にも関心を持っていただきたいと願っています。
外国産の絹がいつまでも安価でお金さえ払えば入手できるという保証はなく、実際中国での価格は高騰しています。中国生糸の輸出先は数量順に、インド、パキスタン、日本、イタリア、韓国となっています。日本向けはイタリアと同様に輸出単価の高い糸ですが、かつてのように短期でまとまった量のオーダーではないために、日本の要望する品質、繊度のものが容易には入手でき難くなってきているようです。
+9月18日 小鹿野養蚕農家見学会、小鹿野まちあるき、開催します。
*参考資料 「大日本蚕糸会 シルクレポート7月号」

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