県内の職人さんを訪問する匠ツアーも第7弾となりました。リピーターの皆様のおかげではやくも満員御礼となりました。ありがたいことです。
江戸時代とかわらない方法で作られる高級浴衣、長板中形の形付け師・大熊さん、それを染める紺屋・恩田さんを訪問しました。江戸時代と同じ、型付けと染めを分業で、この両家は3代にわたりコンビを組まれてきています。すごいことです。
経済産業省の伝統工芸品、埼玉県の無形文化財に指定されています。

八潮市郷土資料館にて「長板中形」の展示を見学。こちらのモデルも大熊さんと恩田さんです。八潮、三郷、吉川、草加にはかつては浴衣工房、染めの工場がたくさんありました。
関東大震災で都内江戸川、葛飾など中川下流で染め物を行っていた職人さんが避難してきてそのまま住み着いたといいます。

この白地の反物は大変珍しいもので、お二人の作品です。型紙の細かさといい、藍で染まらないように白地には糊をたくさんふくませるために重くなります。

中川と綾瀬川にはさまれた水の豊富な地域なので染物が江戸時代から栄えました。

形付けの3代目、大熊さん。関東大震災後に都内からこちらに越してこられたそうです。6mの長板に型紙を置いて、もち米、石灰などで作った糊をつけていきます。糊の配合も職人によってちがいます。
10分もかからないであっという間に片面の形付けが終わりました。すごい技術をおもちですがいとも簡単にさりげなく。つなぎ目がわからないよう型をおき、糊を均等につける、それをマスターするのに10年はかかるのではないでしょうか。しかも裏もずれがなく柄がぴったり重なるように型をおくのです。

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大熊さんのお父さんの大熊栄市さん。昭和45年に埼玉県の無形文化財保持者として認定されました。
表も裏も同じ柄に染めることで裾が翻ったさいにもきりりとした印象になるという、江戸好みのすっきりさ。
明治中期には「かご染め」という表と裏が違う柄で一度に染まる方法が開発され、長板染めは少なくなりました。その後、浴衣は大阪の手ぬぐい屋さんが考案した注染染めが主流になりました。長板が一日に5,6枚のところ、注染染めは30枚も一度に裏表を染めることができるのです。多色染めも簡単にできるようになりました。
草加はこの注染の「東京本染めゆかた」の産地として有名でした。しかしその技術も今度はプリントものに押され、草加のゆかた工場も絶滅寸前のようです。国内では静岡浜松・愛知鳴海・大阪が主な産地です。
越谷にいらした県内(日本で?)最後の「かご染め」の職人さん、2年前に廃業されました。
浴衣を着る若い人は増えていますが、それが国内の工場の生産継続にはあまりつながっていません。はじめの一枚はプリントものでもだんだんと目がこえてくると藍の色や、生地のちがい、伝統柄の品格などに気づき、職人技のよさにひかれていくものです。そのときに本物がなくなっていたら・・・。悲しいですね。(つづく)
中川の堤防のすぐ脇にある大熊家、このあとは川魚で有名な料亭でランチです。(つづく)
NPO川越きもの散歩のブログもごらんください。
http://blog.ap.teacup.com/kimonosanpo/

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