
1年で最も体調管理がし易いと言われる5月場所。今年は前半は比較的肌寒い日が続き、体調管理が難しい部分もあったが、終わってみれば今場所も“つつがなく”横綱の全勝優勝で幕を閉じた。
横綱の強さはさておき、今場所は所属する部屋によって力士達にかなり勢いの違いが目立った場所でもあった。今場所、関取陣が最も安定かつ充実した成績を残せたのは佐渡ヶ嶽部屋で、部屋頭の琴光喜が13勝で準優勝を飾ったのを始め、琴欧州(10-5)、琴ノ若(8-7)、琴奨菊(10-5)、琴春日(8-7)の全員が勝ち越し。ちょっと計算をしてみると、佐渡ヶ嶽部屋の関取全員が取った相撲の番数が合計75番でそのうち49勝しているから、一人あたりの勝ち星は
9.8個、勝率にして
65.3%。これは大変な好成績である。しかも、驚くべきことに、最年長の兄弟子・琴ノ若が顔から土俵に突っ込んで力士の模範を示した9日目以降、佐渡ヶ嶽部屋の力士達の白星が一気に伸び、特に琴光喜と琴奨菊が中日以降土付かずで大勝ちしている。兄弟子の、弟弟子達への刺激の強さを物語っている。
それとは対照的に、鳴戸部屋は部屋頭・若の里が小結の地位でまたしても負け越し、それが部屋全体のムードに影響を及ぼしたようだ。若の里(6-9)、隆乃若(5-10)、稀勢の里(5-10)、隆の鶴(4-11)で全員が負け越し。合計60番中、勝ったのはわずか20番で、一人あたりの勝ち星は
5.0個、勝率は
33.3%の散々な成績である。場所中、兄弟子が毎日ため息まじりに稽古をしたり、無言でちゃんこをつついたりしていたのでは、弟弟子たちも意気消沈してしまうのだろう。誰かが部屋のムードを盛り上げ、来場所へと気持ちを高める必要があると思われる。
【最後に一言】今場所も変化で勝負がつく取組が幕内だけでも15番近くあった。変化でついた勝負の決まり手は、たいてい「はたきこみ」や「引きおとし」と記録されるが、攻防のあった相撲でも「はたきこみ」や「引きおとし」が決まり手になることを思うと、これは割りに合わない。これからは
「変化」という決まり手(あるいは勝負結果)を加えても良いのではないか。よく「変化は食う方が悪い」などといたずらに正当化されるが、観客は力士達の相撲を観に来ているのであって、星勘定に付き合うために入場券を買っているのではない。変化し易い力士が誰なのかをマークするためにも、これは有効な方法ではないだろうか。

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