「初日からケツ見せて負けるようじゃ、とても綱は張れないゼ。」そう、土俵下に結びの一番を控える横綱・朝青龍はそう思ったに違いない。先場所、初賜杯を手にした白鵬は、大関に昇進した2場所目で綱に手をかける資格を有したということで、マスコミでも「戦後初の最短昇進なるか?」と取り沙汰されている。しかし、先場所は第一人者の朝青龍が不在のある意味“ボーナス場所”であったことを考えると、果たして今場所の白鵬は先場所同様の相撲を取らせてもらえるのか、やや危惧していた。白鵬の前に立ちはだかるのは他でもない朝青龍であることは容易に想像できるが、なんと初日は小結に昇進したばかりの朝赤龍までもが強敵になってしまったのだから始末が悪い。
落ち着いて堂々としているように見える白鵬であるが、意外に肝っ玉の小さい一面もある。例えば、今年に入って優勝に手がかかりそうになりながら、肝心な所で星を落としてしまい、三度目の正直でやっと先場所初優勝をすることができたことがその典型である。ケガをしている間は、立会いの変化で白星を拾いに行くことも平気でやる力士だ。それを考えると、今回もそうすんなりと綱に手が届くというわけにはいかないだろう。昇進を阻む最大の難敵は、やはり白鵬の肝っ玉の小ささなのではないだろうか。これをどう克服して行くか、これが本場所の土俵上での大きな課題となろう。
肝っ玉の大きさで言えば、やはり雅山も初日からいいところ無し。すっかり“オオゼキフッキ”の文字が目の前にちらついて、欲が出てきてしまっているのだろう。体が先場所のように全く動いていないばかりか、気持ちも集中していないようである。失うものがない時の雅山は強いが、得るものを狙う時の雅山はどのような相撲を取るのか、5日目の序盤戦くらいまでに答えが出るだろう。
休場明けカド番の栃東、忘れ去れた両大関・千代大海と魁皇らの古参大関は、それぞれが自分の相撲で初日白星。小結に昇進した稀勢の里は、横綱の左腕だけの速い相撲に一蹴された。

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