2敗で白鵬の背中をぴったり追っていた安馬と琴光喜が、まさかの両崩れ、千秋楽を待たずして、白鵬の自力V8となった。今場所は、朝青龍が休場であるため、千秋楽の結びの一番は消化試合となってしまった。青白時代はほんの半年しか続かなかったことになる。
今日の立役者は、何と言っても豪栄道だろう。1年前は新入幕で大ブレイクしたものの、その後は立ち合いの後にすぐ引いてはたいてしまう癖が生まれ、なかなか上位で勝ち込むことができなくなってしまっていた。しかし、今場所はそんな立ち合いの癖を修正し、前へ出る圧力を存分に発揮している。皮肉なことに、今日の安馬を下したのは、立ち合い直後の引き。優勝を意識して体が硬くなっていたのか、安馬は立ち合いでひと呼吸早くたってしまい、両手を出して攻めたところをタイミングの良い豪栄道の引きを食らってしまった。そのまま体が左側に泳ぎ、気が付くと白房下につんのめって出てしまっていた。

「まさか安馬が豪栄道に負けるとは」――その動揺は観客だけでなく、土俵下で控えていた琴光喜を大きくゆさぶった。「ぼ、僕が負けたら今日にも優勝が決まってしまう」そんな思いも空回り。本来なら大関相互援助組合制度で、このような場面では勝ち越した大関はそこそこ手加減をするものだが、どうしたことか今日の相手・魁皇は手加減するどころか、まわしにこだわらず猛然と前へ攻め込んで来た。これにはさすがに琴光喜もなすすべ無く、向正面土俵へ足を出してしまった。
それを見ていた琴欧洲がどう思ったのかは想像難しいが「今場所7-6だし負け越したら大変だ」と思っていたのは確かだろう。がっぷりになれば、白鵬よりも上背がある数少ない力士であるし、夏場所の寄り切った場面をプレイバックすれば、白鵬に勝つことはそれほど難しいことではない。事実、右四つに渡り合い、1分近く引き付けあい、差し手の応酬を経た大相撲となった。しかし、白鵬の方が相撲は1枚も2枚も上手。最後はまわしの良いところを取って豪快に上手投げで仕留めた。
2-7から7-7まで星を戻した把瑠都にプロ意識が芽生えてきている。明日勝ち越して小結を死守したい。稀勢の里は、今日も豊ノ島に完敗で9敗目。

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