15日間の長い本場所を戦い抜くのであれば、やっぱり若い方が俄然有利であると感じる。もちろん、これは同じ技量があってのことだが、前半戦に大活躍した30代の力士と、前半戦にやや固さがあった20代の力士が13日目に対戦すると、若さの差が勝負の差に出る。
今日の見所となった一番は、大関昇進の目安となる33勝にリーチがかかる関脇の安馬と、前半戦7連勝をした元大関の雅山との対戦。雅山の実力からすれば、安馬に対して一方的に負けることは考えにくいのだが、前半で力を使い果たしてしまった雅山は、11日目から連敗、9-3と失速気味。一方、後半から体が自由に動いてきているように勢いづいている安馬は、相撲ますます冴え渡り、弾かれた輪ゴムが飛び出すように立ち合いから一気に前に攻め込んだ。突っ張りは雅山の十八番であるはずだが、安馬のバネと気迫に一瞬たじろいた雅山は、ハタく余裕すらなく、自らハズを出すような格好でなすすべなく西土俵を割った。

もし、雅山と安馬が場所の前半で対戦していたら、このような展開にはならなかっただろう。そういう意味でも、番付と星数と、そして対戦時期によって場所の展開が左右されると言える。実力がありながら、前半と後半で星の並びがガラリと変わる力士は、15日間の力配分や対戦力士との相性なども計算する戦術が必要である。今場所の安馬は、その戦術がクルクルと回転し、上昇気流に乗って1日1番を楽しんでいるように見える。大関昇進も射程距離内に見えてきたと言って良いだろう。
大関が一人増えるのなら、別の大関を一人減らした方がいいかもしれない−−と、琴欧洲の相撲を見ると不謹慎にも思ってしまう。今日は白鵬との結びの一番。がっぷり胸を合わせるまでは良かったが、差し手争いをしているうちに、攻め込む足の方向を間違え、投げられるタイミングに入っていないのに、自滅するように土俵に崩れてしまった。決まり手は上手投げとなっているが、白鵬は「オイ、なぜここで転ぶ?」といった不完全燃焼気味の視線を横たわる大関に投げかけていた。これで琴欧洲は7敗目。
30代の出島は、前半6連勝のあとタドンが並び7連敗。対する安美錦は勝ち越し。把瑠都と稀勢の里は長い四つ相撲になったが、稀勢の里が根気で寄り切った。十両の四ツ車は、歌舞伎役者に会うために、もう1つも負けられない7敗目。

0