言うまでもないことだが、相撲は1番1番の対戦時間が設定されていない。勝負がつくまで相撲を取ることになる。一応、3分〜4分に及ぶ大一番になった場合は水入りになり、戦前は日が暮れると“勝負預かり”にもなったが、いずれにしても白黒付けるまで戦う必要がある。つまり、すべての取り組みが一本勝負だということである。
ふと、相撲にも柔道のように<技あり>や<有効>というような、小技が決まるごとにポイントが加算されて行き、勝負が付かない場合は3分経ったあたりで行司と審判が審議をしたらどうなるだろうか。両力士が東西の二字口に立ち、行司の勝ち名乗りを受けて勝者が決まるとしたら・・・相撲はとてもつまらない競技になってしまうだろう。
今日の日馬富士と旭天鵬の一番を見て、相撲がポイント制でなくて本当に良かったと思った。体格では旭天鵬の方がはるかに立派ではあるものの、日馬富士は立ち合いからのバネが武器。しかし、今日は立ち合い自らがっぷりに組みに行き、土俵中央で胸を合せてしまった。旭天鵬にとっては<有効>であろう。さらにここで旭天鵬はむんずと大関の右上手をつかんだ。柔道ならこれは<技あり>くらいになろうか。窮屈になった日馬富士は、その状態から脱しようとと必死に下手投げに出るが、相手の抵抗もあって苦しい体勢になってしまった。最後は捨て身の投げの打ち合いを演じて、辛うじて大関の方に分があった。もし、同体になったのなら、上手まわしを取っていた旭天鵬に軍配が上がっていたかもしれない。いずれにしても、相撲にポイント制の導入は無意味であることが分かる。
把瑠都と栃ノ心の一番は意外にも初顔であったが、背の高い色白の二人が対戦すると、土俵がモカ色のバースデーケーキのようにも見えてくる。右四つの形から把瑠都がグイっと栃ノ心を50cmくらい持ち上げ、プラプラさせた足も空しく栃の心は吊り出された。力の差が歴然と出た一番。
高砂審判長が軍配が上がった方の東西を混乱、翔天狼の名を若天狼と呼び間違え、行司差し違えで勝敗が覆るといった失態を演じてしまった。

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