上に立つ者の能力があまりにも絶大だと、下の者は意欲を失うことがある。例えば、会社で若手敏腕カリスマ社長が経営を一手に切り盛りし、マスコミにも取り上げられ、社員を束ねる力を発揮すると、No.2、No.3の立場の人の心が離れ、長期的には次代を担う人材が育成できないことがままある。それを相撲界に当てはめれば、社長が白鵬、次期社長候補社員が5人の大関陣ということになるが、今場所の大関の中に社長の勢いと仕事に対する集中力に追随できる部下は誰もいないようである。
大関陣の12日目までの成績と、負けた対戦相手を整理してみる:
日馬富士 9-3(●琴奨菊・栃ノ心・白馬)
琴欧洲 8-4(●栃ノ心・鶴竜・朝赤龍・白馬)
琴光喜 7-5(●雅山・稀勢の里・栃ノ心・魁皇・北大樹)
魁皇 6-6(●栃ノ心・琴奨菊・豊ノ島・把瑠都・白鵬・日馬富士)
把瑠都 8-4(●鶴竜・琴欧洲・日馬富士・白鵬)

自分と同格または格上の力士に負けるのならいざ知らず、1年前は十両と幕内をウロウロしていたような新参者にも相次いで敗れてしまっている大関が多いことが嘆かわしいる。力を付けてきた平幕・栃ノ心は把瑠都を除く4大関を撃破して、大関を上位だと思っていない取り口であるし、白馬も大関を下す快感を味わって来場所に更に力を上げてきそうな勢いである。昨日の琴光喜に至っては、物おじしない北大樹に対してひるんだ一面を見せ、張って脇が空いた所をあっと言う間に向正面土俵に押し出されてしまった。まるで若手新入社員に営業成績を一発で抜かれてしまった窓際社員のようだ。
今日現在、大関の中で最も成績が良いのは、左足のケガで危惧された日馬富士であるというのも皮肉な展開であるが、番付順から言ってもおそらく千秋楽に割が組まれるだろうから、これ以上絶対に星を落とすことなく、社長にひとアワ吹かせるような相撲を取って欲しい。このままでは13日目にも白鵬の優勝が決まる可能性がある。白鵬一人ワンマン社長全盛時代の幕開けとなるのだろうか。
高見盛は3場所ぶりの嬉しい勝ち越し。阿覧は朝赤龍に腕力のみで対抗して4敗目。稀勢の里は7-5で勝ち越しても2ケタに乗せられるか微妙。

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