ここまで盤石だと思われた横綱白鵬が、鶴竜に完敗。両差しを許して白房下へと吊られ気味に寄り切られた。結びの仕切りを観ていて「今日は鶴竜が何かやってくれるのではないか」という期待は的中した。

なぜそんな期待を抱いたか――その理由はいくつかある。まず、白鵬には“10日目のジンクス”がある。これまで前半は完璧な相撲を取っていても、10日目あたりでふとした気の緩みが生じ、立合いの集中力が落ちる。加えて、10日目頃には元気の良い関脇と対戦する流れになる。これまで稀勢の里や琴奨菊らが関脇の地位にいたので、10日目前後に不覚を取ることがままあった。両力士とも大関となったために、終盤に当たるように割が変わり、白鵬自身も対戦相手のペースが少し狂っているようにも見受けられる。
加えて、鶴竜は今最も力を付けている力士の筆頭。平幕力士達が口を揃えて「横綱大関以外で一番強いのは鶴竜だ」と言っているのも頷ける。意外にも、これまで20回以上横綱戦に挑んできたが一度も勝つことができなかった。なので、そろそろ攻略法を見つけ出してもいい頃だと思っていた。
今日は白鵬の強い踏み込みを計算に入れ、鶴竜はハタキ気味にひょいと下がると、右上手を軽く取って横綱の頭を抑えつけながら回転。慌てた横綱の懐に低く入り、師匠譲りの両差しになるやいなや休まずに横綱を寄り立てた。日馬富士戦でも見せた吊り上げるような寄りを、俵の上で残せる力士はいない。両差しからの寄りの形を完成させれば、鶴竜も今年中に大関に昇進できるのではないか。期待したい。
そして、賜杯の行方の展開は俄然面白くなってきた。現時点では把瑠都が全勝で単独トップ。先場所の千秋楽で横綱を破っているだけに、自力優勝も不可能ではない。追う稀勢の里も、琴奨菊に対して変化してまで勝利に執着するなど、優勝を狙っているのが見て取れる。ぜひ3人の巴戦なども見てみたいものだ。把瑠都は明日、日馬富士戦。対戦成績10-12で苦手な相手であるだけに、終盤の一番一番が要になる。新入幕の千代の国は勝ち越し。新小結・若荒雄は早くも負け越しとなった。

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