今日は家から車で5分くらいの距離にある、老人ホームでのはじめてのミニコンサートを行った。杉並区の施設で、かつてどこかの会社の社員寮を改造した施設だった。こじんまりとして、人数は20人弱、職員は7〜8人くらいだろうか。
入居者の皆さんはどうやら歩行に困難を持っておられるかたが多いようだった。
普段行っている私立の企業の施設とは違って公なだけに、学校で言う私立学校と公立学校の違いというものがなんとなくある。
少々早めにおじゃましたが、まだ食事中だったのでしばらく玄関でまたされた。
初めてボランティアでお邪魔したときの言うに言われぬ緊張感がある。
かくもボランティアとは勇気のいることかとびっくりする。
職員にすれば毎日忙しい雑踏のなか、ボランティアに来てくれたのはいいけれど、いったい何処のだれで何をしてくれるのかわからない状態では、心から歓迎を出来る心理状態にはなりきれないだろう。みんな半分私から顔を背けている。こちらにもそれがわかるし、もし実施したことが大したことなかったときには歓迎どころか、二度と来るなという感情を無言のうちにぶつけられることになる。
入居者を世話してるせわしない動きを遠巻きに見ていても、実に大変な光景で、苛立ちや、むなしさ、もどかしさなどの感情の空気が一杯つまった見えない風船が部屋中を飛んでいるのが感じられる。
このような状況に入り込んで少しの楽しさと、わずかな微笑と、暖かい安らぎを残していければと思ってきているのだが、日常の現実を目の前にみると、正直言って逃げ出せるものなら今すぐ逃げたいとも思ってしまう。
入居者の反応はどうだろうか、などといらぬ心配などもするし、見知らぬ人にいきなり尺八なんか聞かせて本当に喜んでもらえるかと少々不安にもなる。
しかし、いつものペースで見事にやりぬいて皆さん楽しく過ごしていただけた。大きな声で皆さん歌っていたし、泣いている人もいたし、手をたたいて喜んでもいた。また来てねと頼まれもしたし、なんといっても職員の皆さんの接し方が180度かわり、急に親しみの感じられる対応で受け入れてもらえるようになった。
うまくいく自信はあったが、実際に思い通りにことが運んで本当によかった。かなりの経験と準備が裏打ちされているので、今日の経験を踏まえれば、何処へ行ってももう怖くない。
帰り際、今日の謝礼として交通費の入っている封筒をいただいた。一度は固辞したが、どうしてもというので受け取った。車にのって中身を確認したら500円玉が一つ。心があたたまった。そのまま買い物にでかけて缶ビール一本とメルシャンワインを買って今夜は乾杯することにした。普段家ではアルコールを飲まないが、今日はむしょうに飲みたい。

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