これは邦楽のテリトリーだが、最近良く聴いている。
歴史的名演の録音版、くり返し聞いていると意味がよくわかってくる。
しかし見事な台詞だ--。
つくづく思うのだが、どうして日本の学校では邦楽をきちんと教えないのだろう。西洋音楽だけではあるまい。ロックだけが音楽でもないし、ポピュラー、演歌だけが音楽でもない。 それぞれに良さがある。浄瑠璃、小唄も日本の伝統音楽。大切にしたいものだ。

CDデータ
知らざぁ言って聞かせやしょう
歌舞伎名台詞集
VZCG-310 定価:2,625円(税込) 2003年5月25日発売
ビクター伝統文化振興財団
http://www.japo-net.or.jp/japonet/hinban/cd-data/file/vzcg-310.html
【収録内容】
弁天娘女男白浪
べんてんむすめめおのしらなみ (浜松屋)昭和7年録音
弁天小僧:6代目尾上菊五郎
南郷力丸:4代目市川男女蔵(3代目市川左団次)
日本駄右衛門:6代目坂東彦三郎
浜松屋幸兵衛:尾上菊三郎
弁天娘女男白浪
べんてんむすめめおのしらなみ (稲瀬川勢揃)昭和7年録音
弁天小僧:6代目尾上菊五郎
南郷力丸:4代目市川男女蔵(3代目市川左団次)
日本駄右衛門:6代目坂東彦三郎
忠信利平:松本豊(2代目尾上松緑)
赤星十三郎:4代目坂東竹三郎(4代目尾上菊次郎)
浮世柄比翼稲妻
うきよがらひよくのいなづま (鈴ケ森)昭和5年録音
長兵衛:7代目松本幸四郎
権八:15代目市村羽左衛門
三人吉三廓初買
さんにんきちさくるわのはつかい (大川端出会)昭和5年録音
お嬢吉三:4世沢村源之助
お坊吉三:市川小太夫
和尚吉三:沢村源十郎
おとせ:中村辰之丞
梅雨小袖昔八丈
つゆこそでむかしはちじょう <髪結新三>(永代橋橋詰)昭和7年録音
髪結新三:6代目尾上菊五郎
手代忠七:4代目市川男女蔵(3代目市川左団次)
弥太五郎源七:6代目坂東彦三郎
与話情浮名横櫛
よわなさけうきなのよこぐし (源氏店) 昭和17年録音
与三郎:15代目市村羽左衛門
蝙蝠安:6代目大谷友谷衛門
お富:12代目片岡仁左衛門
天衣紛上野初花
くもにまごううえののはつはな <河内山>(松江邸玄関先)昭和5年録音
河内山宗俊:初世中村吉右衛門
北村大膳:中村吉之丞
高木小左衛門:市川九蔵(8代目市川団蔵)
渡辺数馬:中村辰之丞
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名台詞はここにある
http://www.koalanet.ne.jp/~jawa/kabuki/yougo/meizerifu.html
が、
好きなのは与三郎(与話情浮名横櫛、源氏店の場)
春日八郎の”お富さん”では玄冶店(歌舞伎は実名を使わないということで源氏店)となっている。
与三郎:え、御新造さんぇ、おかみさんぇ、お富さんぇ、
いやさ、これ、お富、久しぶりだなぁ。
お 富:そういうお前は。
与三郎:与三郎だ。
お 富:えぇっ。
与三郎:おぬしぁ、おれを見忘れたか。
お 富:えええ。
与三郎:
しがねぇ恋の情けが仇 命の綱の切れたのを
どう取り留めてか 木更津から めぐる月日も三年越し
江戸の親にやぁ勘当うけ よんどころなく鎌倉の 谷七郷は喰い詰めても
面に受けたる看板の 疵がもっけの幸いに 切られ与三と異名をとり
押借り強請やぁ習おうより 慣れた時代の源氏店
そのしらばけか黒塀の 格子造りの囲いもの
死んだと思ったお富たぁ お釈迦さまでも気がつくめぇ
よくまぁ おぬしぁ 達者でいたなぁ
安やい これじゃぁ一分じゃぁ 帰られめぇじゃねぇか
子供の頃は、デンスケ劇場とか、寄席とか、芝居の中継をTVでよくやっていた。NHKでも歌舞伎とか。
なかでも白波五人男は、お笑いでもアレンジしてよくやっていたと思う。
子供ながら、傘をさして下駄を踏み鳴らして勢ぞろいして見栄を切るのを見ているのは楽しかった。
白浪五人男(青砥稿花彩画、稲瀬川勢揃いの場)
日本 駄右衛門:
問われて名乗るもおこがましいが、生まれは遠州浜松在
十四の年から親に放れ、身の生業も白浪の沖を越えたる夜働き
盗みはすれども非道はせず、人に情を掛川から金谷をかけて宿々で
義賊と噂 高札にまわる配付の盥越し
危ねぇその身の境界ももはや四十に人間の定めはわずか五十年
六十余州に隠れのねぇ 賊徒の首領 日本駄右衛門
弁天小僧菊之助:
さてその次は江ノ島の岩本院の児あがり、
ふだん着慣れし振袖から髷も島田に由比ヶ浜、
打ち込む浪にしっぽりと女に化けた美人局、
油断のならぬ小娘も小袋坂に身の破れ、
悪い浮名も竜の口 土の牢へも二度三度、
だんだん越える鳥居数、八幡様の氏子にて鎌倉無宿と肩書きも
島に育ってその名さえ、弁天小僧菊之助。
忠 信 利 平:
続いて次に控えしは月の武蔵の江戸育ち、幼児の折から手癖が悪く、
抜参りからぐれだして旅をかせぎに西国をまわって首尾も吉野山、
まぶな仕事も大峰に足をとめたる奈良の京、
碁打ちと言って寺々や豪家へ入り込み盗んだる金が御嶽の罪科は、
蹴抜の塔の二重三重、重なる悪事に高飛びなし、後を隠せし、
判官の御名前騙りの忠信利平。
赤 星 十三郎:
またその次に列なるは、以前は武家の中小姓、故主のために切取りも、
鈍き刃の腰越や砥上ヶ原に身の錆を磨ぎなおしても抜き兼ねる、
盗み心の深翠り、柳の都谷七郷、花水橋の切取りから、
今牛若と名も高く、忍ぶ姿も人の目に月影ヶ谷神輿ヶ嶽、
今日ぞ命の明け方に消ゆる間近き星月夜、その名も赤星十三郎。
南 郷 力 丸:
さてどんじりに控えしは、潮風荒き小ゆるぎの磯馴の松の曲りなり、
人となったる浜育ち、仁義の道も白川の夜船へ乗り込む船盗人、
波にきらめく稲妻の白刃に脅す人殺し、背負って立たれぬ罪科は、
その身に重き虎ヶ石、悪事千里というからは
どうで終いは木の空と覚悟はかねて鴫立沢、しかし哀れは身に知らぬ
念仏嫌えな南郷力丸。
これも、有名、ばれちゃってひらきなおるところ。
弁天小僧(青砥稿花彩画、浜松屋の場)
知らざぁ言って聞かせやしょう
浜の真砂と五右衛門が歌に残した盗人の
種は尽きねぇ七里が浜 その白浪の夜ばたらき
以前を言やぁ江の島で年季勤めの児が淵
百味講で散らす蒔銭をあてに小皿の一文子
百や二百と賽銭のくす銭せぇ だんだんに 悪事はのぼる上の宮
岩本院で講中の枕捜しもたび重なり
お手長講の札付にとうとう島を追い出され それから若衆の美人局
ここやかしこの寺島で小耳に聞いた祖父さんの 似ぬ声色でゆすりたかり名せぇ由縁の弁天小僧菊之助たぁ俺がことだ

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