7.31
ノーモアヒロシマ・ナガサキ国際市民会議
被爆60周年市民集会(2)
パネルディスカッション 「ヒロシマ・ナガサキが未来に語りかけること」が行われました。
高橋哲也さんのコーディネートで 崔凰泰(ちぇ・ぼんて)さん(強制動員被害真相究明委員会事務局長)、キャサリン・サリバンさん(平和・軍縮教育研究家)、小西悟さん(被団協事務局次長)がパネリストでしたが、各パネリストは7.29-7.31に夫々の分科会に参加しているので、それを市民集会へ報告するということも含めて発言されました。
いずれの話も、大変示唆に富む話であり、私たちが改めてきちんとした知識を持つ大切さというものを痛感しました。
ここでは、韓国の弁護士、
崔凰泰さんの話を紹介します。
8.15 朝日新聞朝刊、二面 ひと欄
特に
、「被爆者が不当に背負わされている日本の戦争責任を戦争遂行責任者に投げ返し、日本の被爆者が被害賠償を求めて責任追及に立ち上げるべきだ」というくだりは目から鱗でした。
軍事独裁政権の時代を潜り抜けて民衆とともに闘ってきた韓国の人々の腰の座った運動の秘密を垣間見たような気がしました。
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崔凰泰(ちぇ・ぼんて)(強制動員被害真相究明委員会事務局長)さん:
韓国で日帝強制動員被害真相究明委員会事務局をやっています。
「被爆者の要求と権利」の分科会に参加しました。
被爆者の方々は、60年間苦労された と思いますが、これからの課題が沢山あり、特に真相究明をはじめとして、被害者の人権という観点から見れば朝鮮人被害者の問題が全く未解決の問題ですから、これを解決しなければならないし、それ以外にも直接の加害者である原爆を投下した責任者に対して真相究明し、加害の問題を解決しなければならない事、
特にこの問題を解決しな い限り、果たして日本という国が国連の常任理事国になれる資格があるかどうか、と いうことまで分科会で議論されていました。
・・・
私は韓国の真相究明委員会の事務局ということで日本のメディアからたびたびインタビューされます。
「
何故、今になって韓国の植民地時代の動員被害について真相究明委員する法律をつくったのか、一体韓国政府は何をしようとしているのか」と。
誤解をして欲しくないのですが、この法律は韓国政府や政治家が作ったのではなく、
被害者が国籍放棄宣言までしながら韓国政府と政治家に抵抗権を行使し、遺書まで作成するなど被害者が命を賭けて闘って、その結果政府と政治家が止むを得ず作ったものですから、政府が自らつくった法律では無いのです。
実際に、植民地時代の韓国人被害者はこの法律を作るために苦しみながら困難な闘いを強いられ、しかもこの過程においても政治家の無関心を糾弾するために、2003年8月に大統領府の前で大韓民国の国籍を集団で放棄するという署名を作成しこれを提出するために警察の阻止線を突破し、大統領府まで入りました。
被害に対する補償どころか真相究明すらも終戦後60年を迎え始めて一部可能となったのが、現在の韓国の戦争被害者が直面している現状です。この法律によって、被害に対して真相調査申請をすることになりますが、この申請のうち約三割が日本の方が申請しているのです。
私は
広島と長崎の原爆被害者こそ、日本という国民国家の最大の被害者であると信じております。何故かと言うと、その理由は、
日本の原爆被害者は原爆投下60周年となる今日まで加害者から一言の謝罪も賠償も受け取っていないと考えるからです。
謝罪と賠償どころか(原爆が)正義の爆弾として称されているため、罪の無い被害者が今だ日本中の侵略戦争の全ての責任を背負い、彼らの名誉回復すらされておりません。
また加害者に対する合法的闘争の道は、サンフランシスコ講和条約を締結した当時、日本政府が責任を放棄したという大きな障害により塞がっており、このような意味で彼らは二重の被害者であると言えます。
私は
日本の戦争責任は命令したものが責任を取るべきであり、善良な原爆被害者がかわりに取るべきものではない、と思っております。したがって私は
原爆被害者こそが、自身の権利と名誉を回復しなければならないと思いますし、彼らが背負っている戦争責任の重荷を侵略戦争を遂行したものに引き渡し、原爆を使用し投下した者に対して堂々と謝罪と賠償を要求するべきだと思っております。私はこの二つの課題はどちらかが優先するというものではありませんし、順序付けるものでもないと思っています。
まず政府がサンフランシスコ講和条約締結のときの情報をすべて公開し、日本の被害者が自身の権利がどのように処理されたのか我々は知るべきであり、明らかにさせることが第一歩だと思っております。特に私は弁護士として、その過程の中で、果たして韓国の原爆被害者の権利は日本政府がどのように処理したのか、究明しなければならない。
このような過程において、韓国人原爆被害者は日本の被害者にとってかけがえのない味方として活動できると思っております。
・・・
韓国の戦争被害者を支援する方の(集まりの)中で、「
韓国の戦争被害者を支援する事も大事なんだけど、日本の戦争被害者が一杯いるじゃないですか、もっと力をいれて支援してください」と私がたまに言います。
そうするとね、彼らは
「いや、いや、日本のはね、自分が犯した戦争の損害の補償も今やっておらないですから、まあ 自分の被害を世界的に訴えるのは無理だ」という話をよくいわれます。
私はこのような話を聞くとき、必ず言います。 それはね
日本の責任をはっきりさせるためにも、日本の戦争被害に対しては、日本の被害者たちがはっきり言う必要がある、
だからこれは二つの闘いのどちらを優先させるかじゃないのです。
自分の被害に対しては堂々、ある面では義務として訴える必要があるのです。
特に被爆者に対しては日本の方が先に立って強く訴えてください と言っているんです。
再発防止の一番の道は真相究明だと思っています。真相究明なくして再発防止ができるはずがない。
その課題を五つ挙げます。
1)投下の目的
戦争を終わらせる為に投下したのか? 別の目的があったのか?
2)放射能の影響
これが]遺伝性があるかどうか?二世とか三世まで遺伝するか、今日本政府とかアメリカ政府がもっている膨大な資料があるわけで、全部公開して 影響がどこまで及ぶか、これは真相究明の大きな課題です。
3)広島・長崎をなぜ選択したのか?
戦争を早めに終わらせるというのなら、総司令部があるところ、戦争の責任者がいるところに投下するというのなら理解できるけど、なぜ唯の軍事都市(広島・長崎以外にも一杯ある)の広島・長崎を選択したのか?
4)被害者個人の請求権が消滅されたのかどうか?
私は弁護士ですが、国家が国家の結んだ条約によって個人の請求権、特に人道的な犯罪に対する請求権を、国家が勝手に消滅させる事はできない、一般の請求権なら国家が消滅させることもありうるかも知れませんが、重大な侵害に対して国家が勝手に消滅させうるのか?
特にサンフランシスコ条約を結んだときに、連合国と日本政府は個人の請求権をどのように処理したのか、その過程で日本政府はどのような主張をして、どのような反応があったのか、真相究明しなければいけない課題です。
5)韓国人、朝鮮人被爆者の問題はどのように取り扱われたのか?
アメリカでの裁判を起こす事を考えましたが、アメリカでこのようなことをやってくれる弁護団を捜す事は大変難しい。
だから、これからの課題ですが、
・アメリカ政府への情報公開要求
・原子爆弾を民間人に投下したものは法律的に許せないものですから、これに対する要(?)の確認
・謝罪と賠償
をもとめて裁判を起こしていくべきだろうと考えています。

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