麦の穂を揺らす風
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2006年のカンヌ映画祭のパルムドールを審査員の満場一致で獲得したケン・ローチ監督の「麦の穂を揺らす風」を12/16にやっとみることができた。
偶然にも、一説にはアイルランド独立戦争を歌った歌といわれる”The water is wide”を李政美さんのライブで前日に聴いたばかりである。
ケンローチのうつすアイルランドの緑が心に染み入る一方で、その内容は重く哀しい。
終わってしばらく立ち上げれない。言葉を出すことも出来ない。というか、何かしゃべるとせっかくからだに、心にはいったものがこぼれ出てしまう気がして・・・。
勿論全くの個人的評価ではあるが、間違いなく、ケンローチのベスト・ワン、すべての映画の中でベスト3に入る傑作とおもう。
英国人のケンローチがアイルランド独立戦争を描いたこの映画を何故撮ったか、何故撮れたか、それは今の世界情勢と無関係ではない。
他国を占領するということがどういうことか、そこで何が行われるか、それが見事に描かれている。
直接的には英国のアイルランド占領とは何だったのかを鋭く描いているのだが、其の英国は今また中東の他国を占領しているのだ。
そして、人々の独立を求める闘いがどのようにすすめられ、そのなかでなにが起こってくるかを奇麗事だけにしないで見せる。
「この映画は英国とアイルランドの間の歴史を語るだけでなく、占領軍に支配された植民地が独立を求める、世界中で起きている戦いの物語であり、独立への戦いと同時に、その後にどのような社会を築くのかがいかに重要かを語っている」
「過去について真実を語れたならば、私たちは現実についても真実を語ることが出来る。英国が今、力づくで違法に、その占領軍をどこに派遣しているか、皆さんに説明するまでもないでしょう」(ケンローチのインタビューから)
ケンローチは、いつになく、自分の思いたけを主人公のデミアンに、労働者のダン、に語らせている。
軍事優先主義ではない理念、理想、あるべき姿がいかに大切かということを諄々と説いている。
それは イースター蜂起(1916)の指導者だったジェームス・コノリーのスピーチと同じだ。
「明日、イギリス軍を追い払い、ダブリン城をに緑(アイルランド)の旗を掲げようとも、社会共和国を組織しない限り、我々の努力は無に帰する。イギリスは、その資本主義者を通して、彼らがこの國に植え付けたすべての商業的で個人主義的な制度を通して、私たちを支配し続けるだろう」
1921年の停戦条約でアイルランド国内は分裂、条約賛成派が反対派をアイルランド自由国軍をつかって弾圧した。 しかし、結局は議会で多数を占めた共和派が完全独立を宣言、イギリスからの独立が実現した。 そこに至るまでの内戦は苦渋にみちたものだったけれども、結局イギリスは去ることになっとという歴史、ケンローチは一筋の希望を見出している。
映画のタイトルは、詩人ロバート・ドワイヤー・ジョイス が ユナイテッド・アイリッシュメン(統一アイルランド協会)の1798年の蜂起を歌った詩からとられている。
アイリッシュトラッドの名曲である。
"The wind that shakes the barley"
I sat within the valley green, I sat me with my true love
My sad heart strove the two between, the old love and the new love
The old for her, the new that made me think on Ireland dearly
While soft the wind blew down the glen and shook the golden barley
'Twas hard the woeful words to frame to break the ties that bound us
But harder still to bear the shame of foreign chains around us
And so I said, "The mountain glen I'll seek at morning early
And join the bold united men," while soft winds shake the barley
While sad I kissed away her tears, my fond arms round her flinging
A yeoman's shot burst on our ears from out the wildwood ringing
A bullet pierced my true love's side in life's young spring so early
And on my breast in blood she died while soft winds shook the barley
But blood for blood without remorse I've taken at Oulart Hollow
And laid my true love's clay cold corpse where I full soon may follow
As round her grave I wander drear, noon, night and morning early
With breaking heart when e'er I hear the wind that shakes the barley.
まだ見ていない皆さん、ぜひ見てください。
東京は
有楽町シネカノン:
〜12/29(金)13:20/16:00/18:40(〜21:00)
12/30(土)〜 10:00/12:25(〜14:35)
吉祥寺バウスシアター:
〜12/29(金)、 20:45よりレイトショー
東京以外
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