ファスビンダーの『ケレル』への出演は・・・?
もちろん、すぐさま、承諾したわ。
あなたが出演を希望したのですか?
ううん、私に連絡して来たのは、イングリット・カーフェンよ。それで彼女にこう言ったの:「ケレルに、女性の役があるの?」すると、「あるのよ」という返事だった。「シナリオを読んだけど、女性の役があったかどうは覚えてないわ」話はそれだけで、私はベルリンへ行ったの。アポの用意をしない人だから、ドアの下に伝言があって、「歯が痛くて、歯医者へ行かねばなりません、僕がいませんが、衣装を見に行ってください」って。衣装を見て、どんな役なのか分かったの、衣装については、絶対に折れなかったわね。で、本人に会わずに、ファスビンダーがどんな監督か分かった。初めて会ったのは、彼の最新作での上映だったわ。ブロンドの女がいる病院での話・・・
実在のドイツ女優の話を映画化した「ヴェロニカ・フォスのあこがれ」ですね。
そう、それ。私はボックス席に居て、そこへ来ることになっていたけど、遅刻してね、暗闇に人影が見えて、私に向いて、ドイツ語を話して来たの、私は全部は理解できなかったと言うと、英語で話して来た。「全員で一杯やるのに集まりましょう、またあとで」と。それでブラッセリーへ行くと、うるさいのなんの、世界一うるさい店だったわね!もちろん、長椅子に座らされて、ファスビンダーも同じベンチに少し離れて座っていた。正面に座っていたら、よく見えたでしょうけど。ドイツ語で話が進む中で、そこに居たわ、喋っらずにね。正面の鏡に彼が映って、それでこの人かってわかった。でもとても良かった。撮影になって、歌があって、監督は私のところへ来て、"Do something beautiful." って言うから、分かったって。
監督は俳優の衣装に関しては、どうしたらいいか分からないものですね。
これじゃないって言うだけよ。
オーソン・ウェルズ以外はですか。
オーソンとブニュエル以外はね。衣装はピエール・カルダンが作っていたの。『黒衣の花嫁』と『エヴァの匂い』が彼が担当したわ。そのエヴァの時、知り合いになって。『天使の入り江』とレックス・ハリソンと撮った『黄色いロールスロイス』も彼の担当。どんなのがいいのか分かるようになるし、提案して、選んでもらうわけ。それなら意味があるし。『突然、炎のごとく』の時は、衣装係がいなくて、トリュフォーと相談しながら、選んだの。
『突然、炎のごとく』は トリュフォーが企画を立ててから、実際にあなたが出演するまでに、かなりの時間は経過していますね。
ええ、確かにかなりの時間が経ってしまって、彼は『大人は判ってくれない』を撮って、でもその話はしなかったわ。
俳優は、4年後にできる、あるいは出来ないかもしれない映画の約束を生きるわけですね。
時には、すぐさま出来る場合もあるけど。
おかしな話ですよね?
ううん、それなしで生きれるのならね、人生で誰が一番大事なのか、見えない訳じゃないから。(fin)

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