全集第28巻P425〜
大正13年を送る
大正13年(1924年)12月10日
「聖書之研究」293号
◎ 大正13年もまた多事多端な年であった。その最大事件は言うまでもなく米国の日本人排斥であった。これは日本だけでなく、世界の大事件である。これによって歴史は、新紀元を開いたと言うことが出来る。
これは悪い事であって、また善い事である。箴言(しんげん)16章4節に言う、「
エホバは凡(すべ)ての物を各自(おのおの)その用の為に造り、悪人(あしきひと)をも悪しき日の為に造り給へり」と。
彼はこの悪い時に、米国に悪人即ち悪い政治家を御起こしになって、日本と東洋とに関わる、彼の善い聖旨(みこころ)を為されようとされつつある。この事を思って、私たちは憤怒を以てではなく、感謝を以てこの年を送る。
年を経て私たちは、この年を顧みて言うであろう、「
是れ主の為し給へることにして我等の目に奇(くすし)とする所なり」と(マタイ伝21章42節)。
◎ 私たちの小さな事業もまた、進みこそすれ、少しも退きはしない。雑誌は依然としてその地位を守りつつある。発行部数は、正味三千九百である。
集会は、会員六百名、大手町時代の九百には及ばないけれども、それが選択された会衆であることは、献金総額が著しく増加したことによって分かる。
殊に「ロマ書の研究」の発行は、最も恵まれた事業であった。これによって、帝都の中央において唱えられた福音が、今や全国に伝わりつつある。神の御助けにより、私たちも私たちの
文書伝道を最も有効的に行いつつある。
私たちは今年もまた故ルツ子の最後の言葉を繰り返して言う、「感謝感謝」と。
完