高橋秀実さんの'13年作品『男は邪魔! 「性差」をめぐる探求』を読みました。
著者は男に訊いても埒が明かない経験をこれまで多くし、それは男がひとりよがりだからだと考えます。妻に訊くと、単純なことをわざわざ複雑化するのも男だと言います。
著者は東京・霞ヶ関にある「家庭内弱者の会」という団体を訪ねますが、そこでは国家公務員キャリアの40代50代の男たちで、それぞれの家庭で「弱者」だと自認する人たちが、夜な夜な居酒屋に集まって慰めあっているのでした。彼らは妻から『役に立たないバカ男』『金を稼げないバカ男』そして最近は『クソ男』と呼ばれていると言います。
そこで著者は男の道として武士道の歴史を調べてみますが、そこでも男はもともと弱いから強くあるべし、という内容でした。戦国時代の『醒睡笑』という書物でも1000余りの男女間のエピソードが掲載され、どれもこれも女性の強さばかりが描かれているのでした。また「男尊女卑」という言葉も、その由来を調べてみると、女性に対する男性の恐怖を封じ込めるために作られた概念であるころが分かります。
さて、著者は読売新聞の人生相談欄「人生案内」の回答者になって3年になりますが、いまだにひとつの相談に対して1〜2カ月は考え込むそうです。著者は困って妻に相談すると答えは瞬時に返ってきます。回答者として自信を失った著者は心療内科医の海原純子さんを訪ねますが、「今頃、何を言っているんですか?」と一蹴されます。彼女に言わせると、男性は育てられていくなかで、強者の立場に刷り込まれるので、自己防衛が強く、表現能力も身につかないとのこと。学生たちの交際を見ていても、男の子は自分のほうが女の子より頭がいい、強くないとイヤなのだそうで、この点では日本は世界でもトップレベルの「ド田舎」とのことでした。著者は妻に質問されるとすぐに絶句してしまうので、その解決法を海原先生に訊くと、「絶句した時の気持ちを表現すればいいし、逆に質問してもいい」と答えてもらいます。
著者は吉田兼好も「女性に何か言いかけられた時、うまい具合に返事ができる男は滅多にいない」と書いてあるのを発見します。ちなみに平成21年度は25万1136組もの夫婦が離婚していて、明治時代の離婚率は今の1.5倍も高かったとのことです。著者は妻から自分が整理したものをあなたが次々に壊していくと言われ、常に人に見られている意識を持てと言われます。彼女は幼少期から立ち居振る舞いについて厳しく躾けられたのだそうです。
著者は次にジェンダーの問題について調べ、「男は仕事、女は家庭」と考える女性は、平成10年の段階で、「そう思う」9.3%、「そう思わない」53.2%、「どちらともいえない」32.9%、と既にこのジェンダー意識はあまりないようだということが分かります。そして「ジェンダーフリー」にするためには、あらかじめフリーにされるべき「ジェンダー」が世の中に存在すべきで、そのような「ジェンダー」が存在していなければ、フリーにすべき「ジェンダー」を作り出す必要がある、という自己撞着の問題を起こしていることも分かります。
ある主婦は男女は生まれた時から違うといい、幼い頃は男の子の方が活発で、ある程度育っても時系列でものを考えられず、探し物が下手、労力の配分が下手と言い、著者が学習塾を訪ねると、男は居なくていいと言われ、幼い姉弟を取材しても姉のしっかりぶりが目につき、あるスクールカウンセラーに尋ねるとADHD(注意欠陥多動性障害)の8割は男の子だと言い、フェミニストの上野千鶴子さんは「生理的に嫌い」ということを論述し、著者は「男装」がブームということで「男装喫茶」も訪れ、そこで女性が妄想することの重要性を学び、「草食系男子」という言葉についても調べ、結局は女性に「邪魔」にされてるということは、「存在」していることを証明しているのだから、「邪魔」と思われても前向きに考えていかなければと著者は思うのでした。
読んでいて確かに頷ける部分が多く、勉強になりました。気軽に読めるいい本だと思います。
→「Nature Life」(
http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)

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