昨日の続きです。
イザークは彼女に興味を抱き、「もしにんじんが青色だったらどうする?」や、「セックスをするときに、相手が彼氏だとわかるのか?」や、「目が見えないのに映画を観に行くのか?」など、馬鹿馬鹿しい質問を連発します。女性はイザークにうんざりしながらも、一つひとつの質問に独自の価値観で答えるのでした。
やがて目的地のロワーズ河岸に到着します。メーターは49フランを示していましたが、イザークはサービスをしようと「40フランだ」と言います。しかし、女性は「48か49フランのはず。あなたの同情なんて必要ない」と言って、50フランを渡してタクシーを降ります。
イザークがタクシーを出発させると同時に、クラクションが鳴り響きます。車の接触事故を起こしてしまったのです。怒った相手が車から降りてきて、「お前盲目か?」とイザークを怒鳴りつけます。
それを近くで聞いていた女性は笑って、川路をゆっくりと歩いて行くのでした。
ローマ
午前4時7分。乱暴な運転で夜道を走り抜けるのは、タクシー運転手のジーノです。彼は無線を相手に一人うるさくしゃべり続けて、やがて広場で神父を乗せます。
心臓病を患う神父は、あまり気分が優れない様子でしたが、ジーノはせっかくタクシーに神父を乗せたのだからと、勝手に懺悔を始めます。神父は「無理を言うな」と拒否しますが、ジーノはかぼちゃや羊を性の捌け口に使った話や、兄の妻と関係を持ったなどの下品な話を、一方的にまくし立てるのでした。
神父は薬を取り出しますが、ジーノが急ブレーキをかけたせいで、薬を落としてしまいます。仕方なくくだらない下ネタを聞き続けますが、神父の病状はみるみる悪化していきます。しかし、ジーノは懺悔をヒートアップさせており、神父の異常事態に全く気付きません。
やがて心臓発作を起こした神父は、急死します。神父が死んだことに気付いたジーノは、「自分の過激な内容の懺悔のせいで神父を殺してしまった」と動揺します。そこで、神父の死体を引きずり降ろして、公園のベンチに座らせます。目を見開いたまま死んでしまった神父に、愛用のサングラスをかけさせて逃走するのでした。
ヘルシンキ
午前5時7分。雪が積もった夜明け前の町を走る運転手のミカの元に、無線連絡が入ります。目的地に到着すると、立ったまま寄り添うようにして眠る、労働者風の中年男性3人が待っていました。
その中の一人であるアキは、酔い潰れており、タクシーに乗ってからも眠り続けていました。ミカがアキの様子を伺うと、残る2人が「今日はこいつの人生で最悪の日だ」と突っかかります。そして、彼らはアキにとって今日がどれほど不幸な一日であったかを、語り始めるのでした。
アキは毎日の遅刻が祟って、会社をクビになってしまいました。その後、ローンを払い終えたばかりの車をぶつけられ、ポンコツになってしまいます。家に帰ると、16歳の娘が妊娠していることが発覚します。そして家族に失業したことを告げると、妻に包丁を持って追い回され、家を追い出されてしまったのです。
一日のうちに人生の辛酸を舐めたアキの友人である2人は、ミカに「お前にアキの気持ちがわかるか」と絡みます。しかし、ミカは「その程度の不幸か」と動じません。2人はミカの不幸話を聞かせるように促します。
ミカは共働きでこれまで頑張ってきた妻との間に授かった、未熟児についての話を始めます。長く生きられないと医者に告げられて、ミカは子どもに対する愛情を押し殺すことにしました。しかし、それを妻に咎められたミカは、小さな身体で懸命に生き続ける子どもに愛情を注ごうと決意します。ところが、その翌朝子どもは息を引き取ったのです。
ミカの話を聞いた2人は涙を流し、アキの不幸など何てこともないと結論を出します。タクシーがアキの自宅に到着すると、2人は「これからはきっとよくなる」と言って、ミカを抱きしめるのでした。
2人が去った後、ミカはアキを起こします。「ここがどこだかわかるか?」と尋ねると、アキは「ヘルシンキだろ」と答えて、タクシーを降ります。早朝の極寒の中、途方に暮れているアキに向かって、隣人が挨拶をする場面で、物語は幕を閉じます。」
ニューヨーク編を除けば哀愁の漂う映画でした。

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