最近レーベルの人とかと話してよく出てくるのは例の某大型チェーン店で来年からスタートするセントラルバイイングシステムについて。
要はどういうものかといいますと、全国にあるそのチェーン店の大都市にある10数店舗以外の、いわゆる地方のお店の商品構成、新商品の初回発注数(初回イニシャル)は全て東京でコントロールします、というシステム。
これね、新人ミュージシャンを売ろうとする仕事やインディレーベルにとっては死活問題。一気に初回イニシャル数が減るのでは?とか、展開のためには当然お金が必要になり、より一層宣伝費の負担が増えるのでは?とか、返品条件が厳しくなってしまうのでは?といった不安要素がいっぱい。
でもその一方で、ウチの商品はそのチェーン店ではセントラルバイイングシステムにはまらない、大都市にある10数店舗が元々イニシャルのほとんどだったのであんまり変わんないんじゃないの?というレーベルの人もいますね。そして場合によっては逆に東京の本社で展開が決定すればお店で扱う全体のアイテム数が減る分、より一層厚く扱ってくれるのでは?という声もあります。
実際、僕が打ち合わせをしたインディのディストリビューターさんは「きっといい場合もあるし悪い場合もあるでしょう」と言ってました。
たぶんこのシステムで一番困るのは「地方で活動するインディレーベルおよびミュージシャン」ですかね。今までは地元にあるお店に行って担当者に「こんなCDを今度出しますので。○○(ディストリビューター名)から商品を取れます。地元を中心に活動していて、ライヴもお客さんが入ってますからぜひ置いてくださいよ」てな感じで言って少なくとも地元のお店にはキッチリ商品が入っている状況を作れたんですが、オーダーが東京一括になればわざわざ東京の本社に行ってプレゼンをしなくてはならないんだけど、1000を軽く超えるインディレーベルが全部本社に行ってプレゼンをすることなんて到底無理なわけで。結局インディのディストリビューターにそれを任せるしかない。でもそんな地方の1店舗で確約をとって欲しいなんていうレーベルの意見を本部でいちいち持ち上げたりはできないだろうから、結局スルー→地元のお店ですら展開はままならない、という状況になりそう。うーむ、大変だなあ。
個人的にはお店に行くことが好きな人間なのでお店のアイテムが全国の中規模以下の店舗で同じになってしまうということはとても残念。おっ、こんなものが!という機会がグッと減るわけですからね。でもお店の現状を聞いているとこれもまあ致し方ないかな、とも思えてくる。それほど地方のCDショップは厳しい。邦楽で売れるものはTVで紹介されるもの。それ以外は壊滅的に売れない、とは地方のお店の店員さんの弁。
ならばそこをバッサリというのはしょうがない。その在庫を持つことがもはや厳しい。
双方の意見を聞いていると、一概に「反対!反対!大反対じゃあああ!!」なんてことは言えないんだな。
でもさ、このチェーン店のセントラルバイイングシステム導入でひとつ問題があって、その問題に対して何も対策が練られていないことがとても心配なのね。それは「注文客に対しての対応」ですかね。
お店に並ぶ商品が一緒になるなら、当然担当はあまり重要ではない、バイトでも商品をガンガン出せてお店を回していける、ということになりますが、じゃあお客さんが聞いてくる商品内容に対する問い合わせなどに真っ当に答えられるような人材はお店に存在しなくなっちゃうのでは?実はそこが重要だったりするんですけどね。
セントラルバイイングは導入します、でもその代わり商品注文や商品問い合わせに対応する人材を確保し、お客様の注文に対して即対応できるようにいたします。というならわからないでもないんだけども。もひとつそこは見えてきてないんですけど。どうなんだろう(もしそれも事業としてあがってきてますよ、というならゴメン)。
そりゃ問い合わせ注文なんて1日の売上の中で微々たるもの、なのかもしれないけどさ、でもこれを切り捨てたらたぶん本当に危険じゃないのかなあ。その小さな積み重ねが売上に繋がると思うんですけど。そういうのはネットで、という意見もあるだろうけど、地方のこのチェーン店があるのは郊外の大きなショッピングモール内で、そこに来るお客さんは圧倒的に壮年、老年含むファミリー層の、いわばネットにまだ馴染みが無い世代も多いのね。つまりネットで調べてから来い、は通じない。本も読まない。かつて聴いたことのあるあの曲は一体なんだったのか?そしてそれはどのCDに入っているのか?
そんな人からの質問に的確に答えられる人間をセントラルバイイングシステムと同時に導入する必要性があるのでは?と僕は思った。
実際先日お会いしたCDショップ店員組合に参加している新星堂の人も問い合わせ時の接客でとある商品の予約数が一気に増えた、という話をしてましたわ。
いわゆる大型レコード店がバッサリとカットしたがゆえ、現在のオリコンのチャートで10位以内に入ってきてるアニメ関連の作品(DVDもCDも)は大型レコード店ではなく、アニメイトに食われているわけです。だってそこのほうが店員さんも詳しいし、特典もあるし、と。
あらゆるジャンルに対して答えられる人材作り、それはとても大変だけどやったほうがよろしいと思うんですけどねー。
まあそんなことを思ったところで来年早々このセントラルバイイングシステムは導入される。さあどうなるのかなあ。
ここを読んでるCDをリリースしてるミュージシャンの人も考えどころだよね。作った作品はやすやすとお店には並ばない。今までもそうだったけれどもっと並ばない。じゃあ作った作品をどうするべきか?全国のもしかしたら自分の作った作品を気に入ってくれるかもしれない、っていう見知らぬ人にどう情報を伝え、どうやって届けるべきか?どの方法が一番効果的か?少なくとも今までレコードレーベルがやってきた宣伝方法以外でもっとやり方はあるような気がするんだけども。
実はね、その答え、僕も未だに出せてません。でも諦めてはいないんだけどね。日々考えるばっかり。

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