呉市行政視察報告書 都市建設常任委員会 松島幹子
行政視察日 平成28年10月4日(火曜日)
呉市の概況
呉市は約人口23万2000人。面積は352.80キロ平米であり、茅ヶ崎市の約10倍。人口はほぼ同じくらいだが、毎年人口の1パーセントぐらい、約2000人ほどが市外へ流出するなどして人口が減っている。呉市は三方を海に囲まれ、海の前にも島があり国防上とてもよい地形である。また、水深も深いことから軍港として栄えてきた。昭和18年ごろには人口は約40万人。
現在は旧軍港が日本遺産となった。6つの軍港のうちのひとつである。現在の高齢化率は33パーセントであり、人口15万人以上の市では全国一、高齢化率が高い市。
まず、呉市都市部建築指導課より説明を受けた。
呉市空家等の適切な管理に関する条例は、議員提案により平成25年の六月議会にて提出され、平成25年6月17日公布された。平成26年1月1日施行。
条例提案にいたるまでは、まずは研究会から始まり、常任委員会で市民参加も行いながら行政側もそれに加わって策定した。
その後、国の特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法平成27年5月26日)が完全施行されたことから平成27年7月27日に条例改正を行った。条例解説のポイントは大きく3つ。
@字句の整理・・・・「空き家」を「空家」へ「適正管理」を「適切な管理」へなど。
A法と条例との内容が重複している規定の整理・・・・重複しているものは削除した。
B緊急安全措置の追加・・・第7条になるが、特措法の中にも無かったので追加した。
緊急性及び公益に反すると認めたものに最低限の措置をする。所有者の同意と費用の徴収をする。
条例施行後は相談件数が急激な増加した。今まではどこに相談したらよいかわからなかったのが、相談を一本化したことが大きいとおもわれる。平成26年から合計で526件の相談があり、事前現地調査件数は526件。所有者調査件数526件。所有者判明件数469件。事前指導件数416件。空き家でなかったなどの事前指導対象外件数53件。立ち入り調査件数49件。助言または指導件数20件。改善件数244件。
特措法により固定資産税の情報が使えるようになり、今までは所有者の判明は4割ぐらいわからなかったが、現在では判明しない件数は3割ぐらい。改善した244件のうち、100件は解体済み。33件は改修済み。雑草、樹木の伐採は57件。残り7件は解体予定となっている。条例施行以前は平成14年から24年までに相談は299件にとどまっていた。条例を施行して周知したことで所有者からの相談も出てきた。今までは所有者からの相談は皆無だった。平成14年以前は老朽家屋の相談はほとんど無かったが、平成13年に地震があり、被災後1年ぐらいから相談が出てきたことも条例制定の背景にはある。今後の予定は条例に基づく協議会の設置を検討している。協議会には学識者として税、建築、法務、行政書士、個人情報保護、不動産、公衆衛生の7つの分野からそれぞれの専門家を学識経験者として協議会に入れる予定。
補助金は対象になるのは、@危険建物の所有者A危険建物の法定相続人B危険建物が存在する土地の所有者 解体費用の30パーセントかつ最大30万円。個人の所有物に対して補助金はおかしいのではないかという議論もあるが、あくまでも買いたいを後押しするための施策。解体実績は平成26年度が125件3574万円。平成27年度が79件。2218万円と23年度から継続して毎年1800万円から3574万円まで助成金額をつけてきた。一通り危険な建物が解体されて落ち着いた感じがある。条例施行されて機運が高まった。効果をあげることができた。
勧告までしたのは10件。そのうち解体したのは1件。解体予定は2件。残りは交渉中。
空家バンクに登録をするのは、斜面地、狭小などの場合で値段がつかなくて宅地建物取扱い業界では取り扱いが難しい物件。不動産業界とすみわけをしている。値段がつくものについては宅地建物取扱い業者、値段がつかないものについては空家バンク。しかし、両方に登録している物件もある。
☆空家の通報制度が市民の役割としているが、トラブルはないか。
答 トラブルはないが市がなんでもやってくれるのではないか。通報すればあとは市がやってくれるのではないかと勘違いされることもあるので、市の役割をご理解いただくようにしている。
☆空家の利活用について
答 各地域にある連合自治会やまちづくり協議会のまちづくりの一環としてできることがあればやってもらう。各地域にある市民センターを核としてやってもらうことを想定している。自治会に協力してもらえる施策をいま検討中。
☆緊急措置の実例は
答 まだなし。交渉中の4件中3件は土地または家の所有者や親せきによって解体された。あと1件も自発的に解体してもらっている。
☆条例制定後の市民の反応
答 どこに相談したらよいのか、今まではわからなかったのが条例制定施行後には窓口がわかりやすくなって相談しやすくなった。28年9月末までで603件の相談があった。また、条例施行後は所有者からの相談もある。週に2〜3回。今までは所有者からの相談は全くなかった。解体助成は100件中50件が受けた。
☆新規の登録について
答 平成27年度は31件。28年度はすでに17件の登録がある。また、利用したい人の登録は平成26年は17人。27年は49人。28年は29人である。
☆9月の解体件数と費用は。
16件。470万円。
☆市内の変化について
空家に対する意識が変わってきていると感じる。所有者からの問い合わせが多くなった。何かせにゃあいかんと思うようになったのだろうと思われる。2年9か月で603件もの問い合わせがあった。
☆市内の金融機関は
答 解体ローンを考えた。
☆解体ローンの問い合わせは
答 問い合わせ6件。申請1件あった。
次に呉市都市部住宅政策課から説明を受けた。
空家対策と定住対策はセットになっている。呉市の空家率は広島県の空家率22.1%よりも高い28.43%。全国平均の13.5%よりもはるかに高い現状がある。住宅総数、空家ともに総数が増加している。駅の近くにマンションができて高台から下りて便利なマンションに住み替える状況もある。
平成17年から定住対策室を設置した。若年、子育て世代や団塊世代の定住促進、並びに市内に増加する空家、空き地の活用策について具体的に取り組むため、課内に「定住対策室」を設置した。平成20年4月からは「定住サポートセンター」へ名称変更した。定住モニターツアーとして「海色の歴史回廊くれツアー」を自信を持って実施したが、平成18年度10組、平成19年度3組となかなかうまくいかず中止した。思いがあっても実際には難しいことを痛感した。
一方、平成17年10月からは呉市空き家バンクを定住支援ホームページの上に開設した。平成27年度からは、今まで島嶼部だけでなく、空き家バンクの対象を島嶼部だけでなく市内全域とした。そして、県の事業である交流定住フェアなどに参加している。これまでの成約実績は64件。このうち、定住サポートセンターが紹介した物件は24件。定住サポートセンターではあくまでも紹介だけで売主と買い手、あるいは貸主と借り手、双方で相談していただき、その後は場合によっては事業者に仲介に入ってもらうこともあるようだが市では紹介だけで、紹介後のことについてはタッチしていない。問い合わせ件数を見てわかるとおり、対象を島嶼部だけでなく市内全域にした途端に相談件数、成約件数が増加した。平成26年度の相談件数、成約件数は38件と3件だが、27年度は173件と12件。28年度はすでに185件と8件とそれぞれなっている。一方、呉市空き家バンク利用登録者は述べ176件。内訳は県外80件。県内96件。
平成27年度は空き家実態調査を実施した。空き家と判明したのは4872件。
平成28年度は空き家所有者意向調査として所有者にアンケートの送付を現在検討中である。支援制度@市外からの移住者が「戸建て」の中古住宅を購入し、居住する場合に購入費の一部を助成。基本額50万円。購入費の1/2。最大100万円まで。
支援制度A子育て世帯の転出抑制と増加する中古住宅の流通促進のため、子育て世帯が中古住宅を購入する場合購入費の一部を助成 基本額30万円 1/2。最大40万円まで。 支援制度B呉市空き家家財道具等処分支援事業 空家の所有者が、空家の家財道具の転出・処分に要する費用の一部を助成する。上限10万円。流通に乗せることが条件。 C呉市空き家解体ローン利子補給事業 空き家解体ローンを利用し、空き家を解体する場合、解体ローンの利率の一部を助成。2パーセントに相当する利子を上限。 D学生シェアハウス支援事業 これは、モデル事業として横須賀市を参考に実施する予定。斜面地の空き家に大学生等がシェアハウスの携帯で居住し、地域の自治会活動への参加や近隣の高齢者の支援活動を行う事業をモデル事業として実施し、大学生等に家賃の助成を行い、空き家の利活用と地域の活性化を促進する。
<感想>
人口減少と空家率が高いことに驚いた。茅ヶ崎市では現在、人口も微増中であり定住促進の助成制度は茅ヶ崎市では考えられない。しかし、将来、人口減少に転じた場合には呉市の助成制度は参考になると思う。茅ヶ崎市では、地価が高く値段がつかない物件はそう多くないであろうと思う。また、空き地の利活用を考えるというのはうらやましい限りで、茅ヶ崎市内はどんどん空き地がなくなり、住宅が新築されている現状がある。茅ヶ崎市内でも地域によってばらつきがあると思う。条例制定するのであれば、市内全域での空き家の実態、指導や勧告しなければならない空き家が市内全体で発生している等の状況が必要であろうと思う。そう考えると、茅ヶ崎市ではまだ空き家条例制定は厳しいのではないかと思った。国の特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)だけでいまは対応できるのではないかと感じた。

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