第79回都市問題会議 研修報告
報告者 松島 幹子
日時 2017/11/9 9:30-17:00 11/10 9:30-16;00
場所 沖縄県那覇市 沖縄県立武道館
今年のテーマは「ひとがつなぐ都市の魅力と地域の創生戦略」
新しい風をつかむまちづくりだった。
2日目のパネルディスカッションの中でも出てきたが、このテーマのカギは多様な人がいきいきと生きることが出来る、多様な意見、アイデアを取り入れた街を作ることであると考える。2日目のパネルディスカッションでは事業者などの多様な職種のパネラーで多様な意見が出たが、1日目の基調講演をはじめとして5つの報告では大学の教授と自治体の首長からのみの報告であったので、テーマからしても多様な職種の方々の報告があってほしかった。開催地が那覇市という事で那覇市が持つ問題や課題など那覇市の城間市長、琉球大学の下地教授の報告は貴重だったと思う。基地がある沖縄について、私たちは知らなくてはならないし、他市の事ではなくて私たち事としてとらえなくてはならないと改めて思った。
今年の10月11日の夕方に沖縄県東村高江に米軍の大型ヘリコプターが墜落炎上したことは全国ニュースになって知っていたが、帰りの飛行機を待つ間、空港で地元のニュースを偶然に観た。ヘリの乗組員はすぐに去って、地元の消防などが炎上した機体の消火作業を行ったこと、また、ヘリには放射性物質が積んであったという情報もあることが報道され、墜落した畑の持ち主にインタビューしている場面が報道されていた。私はこんなことは知らなかった。関東では報道されていないのではないかと思う。
以下、「都市問題会議」についてメモより報告する。
基調講演 「多様性のある江戸時代の都市」
日本の歴史の中で「平和の実現」と「街道の整備」が諸国の城下町や宿場町の繁栄をもたらした。
門前町が栄えた。伊勢神宮の門前町として宇治山田。「講」がたくさん作られ「御師」が活躍していた。江戸では「大山詣り」、冨士講、信濃の善光寺などの例がある。
港町としては高田屋嘉兵衛。小豆島の出身で北前船の船長となり富豪になったことで有名であるが、港町で栄えるまちが出てきた。
城下町の特徴としては城を武士のまちが取り囲み、街道沿いには町人のまちがあり、まちのはずれには寺町があり、身分、職業ごとに町が形成されていたのが江戸の町。
近代では宿場町ではなく中間地点のまちが衰退してきた。
江戸時代の遺産は現代人にとっては癒しにつながり郷愁を求める事につながる。
歴史を学ぶと行きたいところも増え、再発見されるまちも多いのではないか。
<所感>
茅ヶ崎市には遺跡がある。歴史に基づいた観光振興は奥が深くて成功につながると思う。茅ヶ崎市のアピールも歴史に基づいたアピールを展開していただきたいと思う。
主報告「ひと つなぐ まち」〜新しい風をつかむまちづくり〜
城間幹子市長より
那覇市の観光客の増加、特に増え続けている豪華客船の入港、インフラ整備などの報告があった。
課題として65歳未満の死亡割合が男女とも全国ワースト1。子どもの貧困利率が全国平均16.3%の1.8倍の29.9%にも上り、子どものサポート体制の充実等に力を入れていることの報告もあった。
<所感>
平均寿命男女とも日本一は年々低下して順位を下げていると聞いた。依然訪れた時より急速に緑がなくなり、モノレールが走り、近代化している。市場へ行く時間がなかったが、市場を近代化した様子などをスライドで見た。課題が多くて市政運営は大変だと感じた。
一般報告
「自然と都市が融合し共生が地域の価値を高めるまちづくり」
北海道釧路市長より
地方分権と地方自治について、歳出の自治はこれまでされてきたが、歳入の自治はまだ道半ばである。
阿寒湖の周りの手つかずの自然、アイヌコタンのまちについて。土地の所有者が将来の住民のため、アイヌ文化を守るために保全し、活動してきて今のまちがあるという報告があった。
「後の世の 春をたのみて 植えおきし 人の心の桜をぞみる」
<所感>
歳入の自治については国に地方分権を求めていくべきだと思う。今の事だけではなく、将来の人、将来のまちの人の事を考えたまちづくりがまさに必要であると思う。
一般報告 「新たなステージに入った沖縄観光」 琉球大学 下地芳郎教授より
沖縄の那覇を本州の大阪府あたりに置くと東と西の両端はどこまで行くか?・・・神奈川県から長崎市まで行く。
沖縄の基地関連による収入が全収入に占める割合は?・・・・わずか5.7%。
那覇軍港は琉球王朝時代に大変栄えた港。現在は軍港であり、使用できないが、返還してもらうと観光産業にとっては大きな力となる。
観光ではなくこれからはツーリズム。観光との違いは、ツーリズムは観光はレジャーという意味合いだが、ツーリズムにはレジャーだけでなくビジネスで沖縄に来る人も含む。
観光の大きな3つの柱としてビーチリゾート、文化リゾート、ビジネスリゾートがある。この3つをとらえて沖縄観光を進めて行くべき時である。
観光プロモーションで占めるネットの割合は、インドネシア40%、アメリカ63%、日本5%と日本はネットによる観光プロモーションが遅れているのは課題である。
沖縄の魅力は4つの顔。それは日本の顔、米国の顔、中国の顔、沖縄の顔。
<所感>
沖縄の基地関連収入の県民所得に占める割合の低さには驚いた。もっとはるかに高いと思っていたのは失礼だった、認識していなかったことは恥ずかしいことだと思った。2020年のオリンピック、パラリンピックについて、沖縄はオリンピックではなくパラリンピックに重視、特化すべきであろうという話には感銘を受けた。オリンピック後を考えると、パラリンピックで注目されれば、沖縄はバリアフリーなまちとしてアピールすることが出来、オリンピック後の観光産業に貢献できるであろうとの事だった。その通りだと思う。まちづくりの視点からオリンピックをとらえることは重要だと思う。
2日目 「パネルディスカッション」
「産業観光による地方創生」株式会社能作
富山県高岡市にある鋳物製造メーカー。全国初で小中学校の授業に「ものづくりデザイン科」がある。現在の社長が仕事中に子ども連れの母親が社長の作業を子どもと見ながら「ちゃんと勉強しないとこんな人になっちゃうよ。」と話しているのを聞いてとてもショックを受けて、モノづくりの素晴らしさを子どもたちにも伝えたいと活動してきた。今では工場見学に多くの人が訪れる観光スポットになっている。モノづくりの体験工房も人気がある。ちょうどアメリカのトランプさん来日しており、安倍首相からファーストレディーのメラニア夫人への贈り物はの株式会社能作作製の自由に曲がるブレスレットが贈られていた。日本が世界に誇る技術である。今では海外にもこの会社は進出しており、富山県の活性化に役立っており、若いデザイナーも富山に集まってきているのは素晴らしいと思った。
「ひとがつなぐ都市の魅力と地域の創生戦略」〜新しい風をつかむまちづくり〜早稲田大学理工学院 後藤晴彦教授より
きづなは経済的な豊かさだけではない。多様な人が暮らしている=都市の豊かさがある。人と人とがつながるためには価値観の共有が大切。20世紀は分ける時代だった。しかし、今は分かちあう時代。分かち合うことによって人と人とがつながっていく、そんな時代ではないか。SNS等の流動するコミュニティーも重要なコミュニティーとなりつつあるのではないか。
人と人がつながり、共感で響きあう〜まちの魅力と新たな地域価値創造〜
まちひと感動のデザイン研究所代表 藤田とし子さんより
「場」と「しかけ」をいかに用意するかが必要である。まちあるきプロジェクトにより他人ごと=自分ごと=まちにたいする愛着とつながった。まち歩きプロジェクトから始まるまちづくりの担い手育成。(和歌山県田辺市)感動、共感で多様な人々のまちづくりが大切であり、まちあるきマップは重要なツールとなる。まちづくりのカギは3つ。空間、ロードマップ(時間)、ステークホルダーマップ(人)。
感性・文化産業と感動産業戦略構築への道〜「感動立県おきなわ!を目指して」 沖縄文化芸術振興アドバイザー平田太一さんより2022年は沖縄復帰50年にあたる。ハートとハードインフラのためにはパラリンピック2020年を沖縄で盛り上げたい。部長の言葉:「文化をおやつではなく主食として考える沖縄。感動立県おきなわを目指そう。」島言葉予算はかつて200万円だったが、1億500万円になった。文化予算は1%あるべきだと思う。観光=親戚づきあいをしてくれる旅の人を育てる事だと思っている。
台本=計画
規模(予算)
配役(キャスティング)=人事
行政の仕事を舞台芸術に当てはめて考えると図のようになると考えている。キャスティングは実績ではなく、期待感でキャスティングする。舞台では1席をたとえば3000円で埋めるためにはどうしたらよいか等、小さいならば小さいなりののせ方がある。@城はよりどころ。シンボルであり、心のよりどころ。A文化と観光を結びつけることが大切Bプロデューサーを育てる。C海外に発信するプロモーション活動Dアーツカウンシルの環境整備をする。法人格を持った団体を育てる。既に法人格を持ったところでは事業にまで発展しない傾向がある。
以下、アーツカウンシルについて調べてみた。
※アーツカウンシルとは、(コトバンクより引用)行政と距離を置いた専門家らによる第三者機関が助成対象を審査して助成先を決め、助成先のその後の活動を評価する。ナチスドイツが文化政策を戦争利用したことへの反省から、第2次世界大戦後の1946年にイギリスで始まった。国内では文化庁や東京都などのほか、昨年7月から大阪府と大阪市が一体となって始めている。今回は個人や企業の寄付金を助成の原資にしており、税金など文化予算を原資にするアーツカウンシルとは異なる。
※アーツカウンシルとは、(公益社団法人全国公立文化施設協会HPより)高い専門性を持つスタッフが、芸術文化の振興を目的に、各種芸術文化事業への助成を中心とした支援を行う独立機関のことをいいます。
行政による文化芸術の支援については、これまで、助成の可否を決定する行政内部の組織や有識者委員会など助成金決定プロセスに透明性が欠ける、行政側に文化芸術活動の現場の状況への知見やノウハウが不足しているため有効な支援が行えない、効果的なPDCAの管理が行われていない等、多くの課題が指摘されてきました。また、そもそも表現の自由の担保という観点からみて、政府や行政の意図が直接的に文化芸術に影響を与えること自体に大きな問題があるのではないか、という指摘もあります。このような課題を解決するため、行政とも、助成される文化芸術側とも一定の距離を取った第三者機関を設立し、専門的なノウハウを蓄積して、公正で効率的な文化芸術支援をしていくための組織としてく。これがアーツカウンシル制度の基本となります。
アーツカウンシル制度は、1946年、英国で誕生し、その後、欧米各国や韓国などでも取り入れられるようになりました。ただし、その形態は国毎にかなりの差があり、また本家の英国でも何度も組織替えが行われています。この点からみるなら、アーツカウンシルには、一つの正解があるわけではなく、時代や地域に合わせてベストなあり方を常に考えていかなければならないものと考えた方がよさそうです。
日本では、2011年度から、芸術文化振興基金で「日本版アーツカウンシル」確立に向けてのトライアルが開始されています。また、東京都では、2006年に文化振興のための施策を総合的かつ効果的に推進するための政策提言を行う知事の附属機関として「東京芸術文化評議会」を設置し、その方針に基づいて、2012年度に「アーツカウンシル東京」が設立しました。この他、アーツコミッション・ヨコハマ(横浜市)、大阪アーツカウンシル(大阪府・市)等、全国の自治体でアーツカウンシル制度への取組が拡大しています。
ふるさとルネッサンス〜16年の奇跡〜福井県勝山市 山岸正裕市長より
「エコミュージアムへの旅」アメリカのフォーブスの調査できれいなまち世界第9位となった美しい街。エコミュージアムからジオパークへとPDCAサイクルが絶えずまわっていて階段を上がっている。醸成⇒発酵⇒発散と戦略的にブランディングに励んでいる。
ひとを育て・人が育つまちづくり 静岡県島田市 染谷絹代市長より
県内で初めてグリーンの郵便ポストを作った。島田市緑茶化計画を進めている。人口戦略はビジョンに変わった。量ではなく「質」へ変わっている。人の移動をどうサポートするかが課題。
2日目の午後の主催者開催の行政視察には旧海軍司令部壕と沖縄空手会館を巡るコースへ参加した。旧海軍司令部壕では、司令官 太田実ほか、約4000人もの兵士がこの壕で最期を遂げた。幕僚室には幕僚が手榴弾で自決した痕跡が残されていた。破片が壁に刺さっていた。雨水は下のほうにたまるので整備する以前は雨水がこの部屋にたまり、血液が壁や床からにじみ出て壁全体を水がたまったところまでうっすら染めていた。地下、20bぐらいのこの場所で兵士は寝る場所もなく立ったまま寝たと聞いた。外へ突撃していった入口、二度と戻ってこなかった入口など胸が詰まった。ご冥福と平和であることを祈った。
海外にも人気がある空手は沖縄から始まったことを初めて知った。空手会館はできてまだ間もなかった。会館内の資料館に掲げられた言葉には感動した。
空手道は礼に始まり礼に終わることを忘れるな
武は暴を禁じ 兵をおさめ 人を保ち、功を定め、民を安んじ、衆を和し、財を豊かにすと、これ武の七徳。
人の手足は剣と思え
人に打たれず、人を打たず、事なきを基とするなり
空手に先手なし
長年修行して体得した空手道の技が、生涯を通して無駄になれば、空手道の目的が達せられたと心得よ。
生半可は自滅である。仁、義、礼、智、信の五常をわきまえよ
すべては自然であり、変化である。構えは心の中にあって、外にはない。
<所感>
文化・芸術は主食に!!の情熱には感動した。文化・芸術は大切。茅ヶ崎市の予算はこの部分、少ないと感じている。また、「アーツカウンシル」については初めて知った。茅ヶ崎市民文化会館の主催事業で10年以上も同じコンテンポラリーダンスの方に出している。担当課は効果を出しているというが反論するだけの証拠を出せないまま続いている。アーツカウンシルの環境整備は茅ヶ崎市にとっても課題だと思う。一般質問などにつなげたいと思う。
旧海軍司令部壕では戦争の悲惨さ、鉄の暴風といわれた沖縄戦のすさまじさを改めて感じ、平和のありがたさ、平和であり続けなくてはならない責任を感じた。沖縄空手会館では世界中から愛されている空手の精神を学べた。特に、北朝鮮とアメリカのトランプのチキンレースが世界中の注目を浴びているので、空手道の心は胸に深く刺さった。「人に打たれず、人を打たず、事なきを基とするなり」「空手に先手なし」「長年修行して体得した空手道の技が、生涯を通して無駄になれば、空手道の目的が達せられたと心得よ。」は政治においても重要だと感じた。

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