研修報告「自治体再生への処方箋 第1回」
テーマ「自治体は新たなリスク構造にどう立ち向かうのか〜リスク管理型経営への転換による自治体組織・政策の再生」
日時 2017年8月2日(水)13:30-16:30
会場 図書館流通センター本社ホール
報告者 松島 幹子
<要旨>
妥当性と適切性・・・理論ないし科学と価値観
妥当性なき適切性は無謀、適切性なき妥当性は空虚
批判の重要性…否定的批判ではなく創造的批判をすべきである。批判により成長する。より良くするために○○の視点。○○の考え方を提示していくことが大切。
政策・哲学は現場に宿る・・・理論、普遍性の重要性と応用力が大切・・・一人一人の住民の声は重要。これが原点となる⇒しかし、ダイレクトに政策に結びつけることには問題がある。
行政法はもともとはフランスからきている。
ドイツ経済学(経営経済学)=ドイツ経営学に基づく法則を実践する学問。
アメリカ経営学(経営管理学)=ドイツ経営学に基づく法則を実践することが中心。
日本の経営学=経営経済学と経営管理学が混在している。
1. 社会システムの中で企業をいかに運営するかの学門。行政組織等含む。
2. 2000年以降、公共選択アプローチが拡大する中で、経営学領域が拡大。
経済学は、各主体の市場を通じた活動原理を追及。経営学は、特定組織体の効率性向上をいかに高めるかを追及。
リスクとは、一般的には「特定の行動の有無に伴って、危険や損失等を生じさせる可能性。」
リスクとは、経済学的には「プラス・マイナス両者を含む変動」。・・・利得が生じる場合はアップサイドリスク、損失はダウンサイドリスク。
施設等物に対するリスクは、安全の観点から「許容できない危険がない」こと。
リスク分担原則
1. 相関関係が低い項目を設定し分担すること。
2. リスク項目に対する対応力のより高い主体が当該リスク項目を負担する事。
3. 「1と2」によって社会的厚生を拡大させる。
※住民、民間、行政で同リスク分担していくかは今後の課題である。
自治体経営とは「将来住民の選択肢を奪うことなく、現在住民のニーズに対応するため、限られた資源を有効に活用する事」
情報は、組織・地域・国の内外を問わない人間関係を形成するための中核的要素であり、情報化は、人間関係を形成する情報の「集積」と「伝達移動」の流れを変える。すなわち、情報化は、人間関係を通じた経済社会活動の権限と責任の体系化を行う基本的要因であり、ガバナンス構造を構築する中核的要因である。
財政は「数字に凝縮された住民の運命」とも言われる。
公会計改革の取り組みは、グローバル化を進める企業会計の考え方の公会計への組み込み、財政法上の現金主義・単年度主義の修正、発生主義や管理会計の導入、資産・負債や減価償却などストック情報の充実、そして、ライフサイクルコストやセグメント会計の導入など広範多岐にわたっている。
増分主義は、将来の自治体経営や政策の姿を過去の延長線上に捉える事を基本とする。
1. 既存政策に対する過去の投資は正しいことを前提とするため、一度始めた始業の見直しが進まず、過去の政策の是非を認識し検討する視点に欠ける。
2. 毎年度予算の財政確保が困難でも、政策を実施するために財源的に不足する点は将来の負のストック(債務やリスク堆積など)に転嫁する姿勢が強く、このため本質的にストック情報の質が劣化しやすい。
3. 将来に向けた不確実性やリスク、将来確実に必要となる再投資費用や退職給与、将来の維持管理費などを単年度主義の下で認識せず将来を見ない性格が強い。
<研修を終えて>
現在は、今までの政治の在り方から大きく転換せざるを得ない過渡期にあると感じる。今までの行政運営になかった経営学の領域が増えてきたのが今から10年ぐらい前からではないだろうか。そして、いよいよ人口減少、歳入減少の中で同自治体運営を行っていくか、舵取りをしていくかが問われている。茅ヶ崎市は残念ながら、増分主義の運営のままであり、一度決めた箱モノ建設をそのまま実施で見直しがない。これからは減分主義の政治へ転換していかなくては、行政運営の基本である「将来住民の選択肢を奪うことなく、現在住民のニーズに対応するため、限られた資源を有効に活用する事」はできず、将来住民の選択肢はますますなくなっていく。財政は「数字に凝縮された住民の運命」とも言われるという言葉は重い。私たちは将来住民の選択肢を奪う事のない行政運営を行わなくてはならないと強く思った。

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