■第5話 ペギラが来た!■ 閉鎖空間の極限状況を描いた正統ホラー。イトー隊員帰還の瞬間とか、久原隊員を襲うとことか、野村隊員の遺体発見のとことかホラー的見せ場満載。窓から見えた雪上車舞い上がりの現場が、実際は基地からかなり離れていたりと、距離的に辻褄の合いがたい部分も散見されて副隊長(?)の蜃気楼説を部分的に支持したりしているものの、いやあ、氷壁のむこうにペギラがゆっくり現われる合成画像は全28話中屈指中の屈指の名場面だ。ペギラ本格来襲のシーン、各建物が順番に吹っ飛んでゆく緊迫感もただごとではない。久原羊子隊員の行動がミステリー色を添えて、ドラマ的に完璧に近いレベルが実現した。久原羊子役の田村奈己って人、聞くところでは江戸川由利子役候補だったらしいですな。この回ではクールな言動が当たったけど、レギュラーとしてはちょっと場違いか。もうひとりの候補、『変身』のあや子役・中真千子だと逆にウェット過ぎちゃうし、全編見直すにつけ、ドライだけどクールでなく必要に応じコミカル味も出せる桜井浩子こそぴったりだったと改めて実感されるというか。かくして『ペギラが来た!』は、レギュラーの2/3が早々に臨時封印されつつ一の谷博士も名のみ言及されるという、キャラクターセッティングを逆説的に強調した巧みな作り、かつ放送順配置と言えるでしょう。
■第9話 クモ男爵■ 桜井浩子と若林映子の怖がり方の対照が面白すぎ。前者逆説的に反発、後者虚勢張る余裕もナシ。ただしホラーは雰囲気だけで、筋がシンプル過ぎたのがどうも。洋館にたどり着いて、大蜘蛛に襲われて逃げてきた、ってだけだもの。その大蜘蛛からして2体ともきわめて弱く、ナイフ一発、車一撃で呆気なく死んじまうし。だからこのドラマの真のオチはこうなんですよ、最後、燃え落ちる洋館を眺めながら一同ほっと息をついているところ、竹原の顔がバカーッと割れて、子蜘蛛がワシャワシャワシャーーーッ、万城目はじめみんなうわあああアっ!!! だってほら、沼に落ちて熱出してうんうん唸っていた竹原くんですよ、クモに咬まれて発熱したに違いない瀕死の竹原くんがですよ、逃げ出すときみんなと一緒に走ってちゃんと丸太を渡ってくのって、変だったでしょ? あれはクモパワーが体内で発酵していたからです。だから最後のオチは、竹原、タランチュラの群れを放出、惨死。ウルトラQは少なくとも半分は子ども向けだから自粛したんでしょうね。
■第19話 2020年の挑戦■ 「2020年という、未来の時間を持つ星へと送られて……」…って、意味わかりませんよね。そこがいい。あまりにテンポいいのですぃーっとかっさらわれてっちゃうのだけど、ディテールをよく考えてみるとナンセンスだらけ。こういう騙されかたこそ、アンバランスゾーンに落ちた醍醐味ってものです。私、学生にもこれ観せて強調してるんだけど、由利子が飛行場で言う「この不景気に気前のよすぎる忘れ物だわ」。このセリフ、使えるんです。何に使えるって、バブルどころじゃない、考えうるかぎり最も景気よかったはずの高度経済成長真っ只中にこういう台詞がお茶の間に自然に受け入れられていたと。むろん東京オリンピック直後は一時的な不景気もどきの揺り戻しがあったかもしれんが、「不景気だ、不景気だ」ってボヤキはいつの時代にも紋切り型に繰り返されていた、って証拠になってるんです。小泉純一郎が企業代表者らとの会合かなんかで「不況不況っていうけど、ホントなの?」ってとぼけてたらしいけど、こればかりは私も小泉さんに同感だぞ。今現在ホントに暮らしづらいと思ってるやつどんだけいるんだと。ええと話それましたが、それやこれやでこのお話、全28話中最高傑作の最有力候補たること疑いありません。万城目がはやばやと消されちゃったことによる緊迫感が最後まで持続。コミカルなスパイスも散りばめられてるし、由利子失神場面が公園噴水の銅像にかぶさるなどビジュアル処理のうまさも光るし、一平の異例の活躍もよし、シリーズ唯一の不定形液状モンスターよし、巨大化するだけしてみましたといったケムール人の脱力系の暴れっぷりもよし。まあだいたいみんな、ケムール人初登場場面で笑います。ギャグ無しなのに笑いとってる場面って、全28話中そこだけでは。だいたいホラーとコメディが融合してるって時点で最高傑作の名はほしいままですよね。
■第20話 海底原人ラゴン■ ウルトラQ:パニック/海・島系参照
■第22話 変身■ この作品、『宇宙指令M774』を下回る失敗作かも。ウルトラQマニアとしてはこういう作品の混入はツライものがある。何がダメなのだろう。うまく言えないのだがたぶん、第一にはテンポの悪さ。行ったり来たり。そのへんは『マンモスフラワー』にも共通するので、制作順初期作品はそうしたスタイル上の未調整を抱えていたということか。第二は、「熱原子X線」なる兵器(?)の意味不明さ、必然性の無さ。第三は、ただ人間が巨大化されても……『フランケンシュタイン対地底怪獣』なみの布石が打ってあればまだしも単に巨大化されてもちょっと……。第四、「愛」がテーマになっているかのようなスタンス。これ、愛がテーマなんかなってねえですよ。男があんな何十メートルにもなっちゃっちゃ、言葉も通じないときたし、愛どころか自衛隊の問題でしょと。「お願い、山へ帰って」じゃないでしょと。帰って済まないのは見ればわかるでしょと。愛なんかにかこつけないで、モルフォ蝶の不気味さで真っ向勝負してほしかったですね。痩せても枯れてもウルトラQ、沼周辺の霧だか霞だかのミステリアスな効果なんか尋常じゃなかったんだから。てわけで分類はサイコじゃなくホラー。いや、当事者がこれを「愛」の問題と勘違いしている時点でサイコっぽいとも言えるか。
■第25話 悪魔ッ子■ こ、これは……、全28話中最高傑作の有力候補だ、間違いなく。波止場にリリーの幽体が立ち上がり、遠い大型船の灯を背景に歩き回るシーンは、恐怖の宮内音楽最高曲も漂って、我が原体験ぶっちぎりベストワン。たまりません。これってまことにおぞましい児童虐待を描いてるんですよね。表面上の溺愛と真実の酷使との矛盾が怖ろしいわけです。幼すぎるリリーではなく魔術師のとっつァんに着目した場合のみサイコ系に分類。小杉義男演じる魔術師は全28話中最高レベルの怪人ですな。『カネゴンの繭』の巫女さんと張り合うか。オルゴールが自動的に鳴りはじめたり、トラック内で猿のおもちゃがシンバル叩いたり、細部が行き届きすぎててホントもぅ泣けるし。エンディングナーションの2バージョンでは「子どもが犯罪を犯すものでしょうか……」の方が神妙で私好きです。
■第28(?)話 あけてくれ!■ ウルトラQ:サイコ系参照

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