〜セメント像の劣化防止作業〜
よみがえる北海道大博覧会(1958年)記念像
北海道大博覧会が開催された翌年の1959年、博覧会の成功を記念して中島公園に5基のセメント像が設置されました。
いずれも彫刻界に大きな足跡を残した北海道出身の彫刻家 山内壮夫の作品です。 作業は8月9日朝9時から始まり、ほぼ一日がかりでした。
風雪に耐え半世紀ですから、劣化するのは仕方がないが、彫刻ファンとしては少しでも長持ちして欲しいと思います。
こんな気持ちで札幌彫刻美術館友の会長が指導する「セメント像の劣化防止作業」に参加しました。 参加者は会長を含め、中島公園近所の住民5人です。
山内壮夫ワールドを次世代へ残そう!
初めての劣化防止作業は、「猫とハーモニカ」で試行することにしました。 高さ80cmと低く作業がしやすいことが、その理由。 成功を確認した上で次の像を手がける予定です。
「猫と……」「鶴の舞」「笛を吹く少女」「母と子の像」は、
中島公園ほぼ中央の芝生の広場のまわりに立っています。
以前、百花園と呼ばれた場所です。
1997年、中島公園リフレッシュ工事にともない、噴水の中にあった「森の歌」だけは場所が変わりました。
長期保存に適したブロンズ像に変わり、中島児童会館前に移され、中島公園の顔として表玄関に据えられたのです。
腕章は必需品
野外彫刻とはいえ美術品です。 作業の大前提は、彫刻を傷めないこと、傷つけないことです。
ボランティアといっても、信用と実績のある団体しか、この作業に携わることはできません。
札幌市から許可をもらってから、作業にかかりました。
作業中は、この腕章を付けることになっています。
善意だけでは、劣化防止作業はできません。 一定の知識と経験が必要です。
先ず、水洗いをして、乾いた後コーティングをします。 3回程度の上塗りは必要です。
最初は優しく水洗い
最初は水洗いで汚れを落とします。
一番目に付く汚れはカラス、鳩などの糞です。
柔らかい布でナゼる程度の水洗いなら問題はないのですが、洗剤を使う場合は相性のいいものを選ぶ必要があります。 ゴシゴシやって傷をつけない配慮も必要です。
この日は朝からカンカン照りで、汗ダラダラの作業となりました。 水の感触がとても気持ちよかったです。
乾くまで休憩、木陰で犬と戯れる
水洗いの後は、やや長い休憩ができました。 と言うのは乾かないと次の手順のコーティングに入れないのです。
木陰で休んでいる時にやって来たのがワンちゃんです。
温かい毛に包まれているのに汗をかいていないようです。
まるで、私たちを励ましに来てくれたようです。
突然現れた珍客に癒されました。
もっと早くコーティングすれば好かった?
劣化防止にパーマシールド剤を使いました。
コンクリート、金属等を侵食風化作用から守り、基材を皮膜で完全に覆うことから防錆作用があるのです。
彫刻「猫と……」も、セメント内の鉄骨が錆びています。
清掃しても、黒い汚れが取れないので何だろうと思って、よく見ると錆びでした。
もう少し早くコーティングをしていたら錆びなかったかも知れません。 惜しいことをしました。
おや? 透明なんですね!
パーマシールド剤は透明なんですね。
白かと思って心配していました。
実は、後から白く塗ったような彫刻は、わざとらしくて嫌いです。 透明な液剤を見てホッとしました。
可愛い助っ人が来てくれた
いよいよ液剤を使ってコーティング施工と思っていたら、可愛い助っ人が来てくれて、会長から教わりながらお手伝いです。
6月の彫刻清掃に参加してくれたSちゃんと、そのお友だちです。 これで暑さもいっぺんに吹っ飛びました。
もう鳩もカラスも恐くはないぞ
完成しました。 洗ったままの奇麗な姿でコーティングされましたから、汚れが取れ易くなりました。
一番先に汚しに来るのは、カラスや鳩などの鳥たちです。
しかし、もう大丈夫。 コーティングしてあるので、ティッシュでちょこっと拭けば、直ぐに汚れは取れます。
美しい公園を次世代に引き継ごう!
Sちゃん、Tちゃん、ご苦労様でした。有難うございました。
今日は心地よい汗をかかせてもらいました。 私のような高齢者の一番大切な「仕事」は次世代への引継ぎです。
札幌の至宝、中島公園を良好の状態に維持して、次世代に引き継ぎたいと思っています。
この劣化防止作業は、ボランティアが文化財のメンテナンスに関わる初例と聞いています。 記念すべき、1回目の試行作業に参加させて頂き有難うございました。
(ホームページ「中島パフェ」管理人nakapa)

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