以前も報告しましたが、住民基本台帳は誰でも閲覧できる制度になっています。
氏名や住所などの基本情報だけなので、一見問題は起こりそうにない制度ですが、実はこの制度は、
1)閲覧できるのは基本情報のみであるが、世帯状況なども容易に想定される。これを悪用して、名古屋では本年3月、母子家庭を狙って少女に暴行していた男が逮捕されるという事件が発生している。
2)生年月日や性別から、特定の性や年齢層への営業行為などが容易になることから、勧誘商法や訪問販売などに利用されている。これを活用して高齢者家庭を割り出し、効率的な「振り込め詐欺」なども可能になる。
3)閲覧して記録された名簿の流用や二次利用を防止する制度的な手だてがほとんど無く、閲覧者は誓約書を提出すれば事が済んでしまう。
などの問題点があります。
そこで私たちは、新潟市の閲覧状況の実態調査を行いました。
今日は同僚の栃倉議員と「緑・にいがた」所属新潟市議として調査報告をマスコミに公表。大勢のマスコミが詰めかけました。
各紙・各局が取り上げましたが、ネット上では
朝日新聞新潟版や
NT21ニュース(6/1分)でその記事が見れます。
さまざまな行政事務の中で「個人情報」が配慮されていながら、この制度上はわれわれの情報がガラス張りの状態に置かれていることが明らかになっています。
以下、調査結果概要を報告します。なお、この結果を裏付ける詳細な資料も作成しております。ご質問などあれば問い合わせ下さい。
■方法
1999年度より2004年度の申請一覧を情報公開請求し、そのうち官公庁などを除く業者を中心に、まず名称をインターネット等で検索し、疑問のある業者(勧誘商法等で被害報告があるようなもの、そもそも電話番号簿やネット上で検索されないもの等)については実際に申請された書類を再度請求、これらを分析した。株式会社・有限会社について可能なものは登記情報提供サービスによって当該業者が実際に存在するか調査した。
また、情報公開クリアリングハウスによる本制度の全国調査にも協力し、その結果を本市で得られた情報と比較し、調査した。
さらに、この過程で、本制度について不服申し立てをおこなっている市民がおられることが判明、その経緯についても調査した。
■結果
1.全体概観
1999年度から2004年度まで、毎年150件から180件程度の閲覧がおこなわれており、そのうち30〜40件が官公庁による請求(総務省、県警、自衛隊など)であり、その他ほとんどが営利業者で、DM送付を目的とするものが大半であった。個人名の請求が年間数件程度あるが、その多くが学習塾開設の案内送付の目的であった。
2.問題点
調査分析の結果、下記のような問題点が明らかになった。
(各会社名については実名で資料を作成しましたが、ここでは広く被害が確認されたり行政処分を受けている業者のみ赤字で実名を示します)
1)架空業者による申請
登記情報サービスにより登記情報を確認したところ、申請された書類に記載された会社が存在していないものが複数あった(株式会社となっているにもかかわらず法人登記されていない)。これらの中には、所在地や社名の変更によるものなども含まれており、全てが架空とは言えないものの、架空と思われるものの中では以下のようなケースがある。
@株式会社××××および株式会社××××
別名の会社だが、同住所。どちらの名称も登記簿情報無し。DM送付用書類が本物とは思えない。同名での問題行為がネット上に報告されている。
A株式会社 ××××
頻繁にかかってくる不審電話から疑問を感じた一市民が独自に実態調査したところ、架空申請の事実が判明し、新潟市に対処を求めている。しかし新潟市は告発などの対処を取っていない。電話をかけると別業者が出るが、その業者名でも問題となっているケースが検索される(厳密に同一のものか確認できないが、経緯から考えて問題のある業者である疑いが濃厚)
B株式会社
ジャーナル日本社
全くの架空会社だが、「発行している新聞」の写しまで添付しているなど手が込んでいる。全国各地で閲覧を繰り返している。他の問題業者と関連しているとの信憑性の高い情報がある。
2)問題のある商行為をおこなっていると思われる業者による閲覧
C株式会社 ××××
絵画の勧誘で問題になっている同名会社があり、申請内容からその会社と同一である疑いが強い。いずれにしても、東京・県内とも登記情報が無く、申請書に記載された電話も通じない。架空業者の疑いも強い。県内の司法書士事務所への相談ケースでも同じ会社の名前がある。
D株式会社 ××××
格安で旅行が出来る」等と言われて『○○○メンバーズクラブ』に入会させられ、入会の必須条件として高額なパソコンソフトのクレジット契約を結ばされるなどの被害が各地で発生している。下記Eと同一住所。
E株式会社
コスモメディアインターナショナル
強引な勧誘商法により、北海道・東京都で実際に行政処分を下されている。本市でも何度か閲覧申請している。上記Dと同一住所。
3)重大問題とまでは言えないが、問題の残る例
F株式会社 ××××
宝石を取り扱っているが、同名の会社が宝石類を強引に販売しているケースがインターネット上で報告されている。
G株式会社 ××××
見合い相手の紹介。1年の会費が30万円。対象年齢独身者に対し勧誘電話をかけているとの報告がネット上にある。本市でも最近まで繰り返し頻繁に閲覧を繰り返している。
<本年4月以降の対策について>
本年4月の個人情報法保護法の成立に先立ち、総務省は全国の自治体の住基台帳担当部長当てに本年2月24日および3月11日、住基台帳事務の留意事項を指示している。
それによれば、個人情報取り扱い事務者に対する注意喚起、虚偽申請の場合の罰則に関する注意喚起、不当な目的の場合拒むことができること、請求事由の審査の厳格化、閲覧により得た情報の管理方法について明らかにさせることができること、法人登記などの資料を提出させること、請求事由に関する資料の提出を求めること、当該事業者のプライバシーポリシーなどの資料を求めること、虚偽申請が明らかになった場合速やかに簡易裁判所に通知すること、窓口担当者にこれらの方針を周知しておくことなどを求めている。
しかし、新しい総務省の指針でも、これまで見た問題を解決するには不十分である。理由は以下の通り。
1)架空業者ではなく、申請者が個人であればそもそも登記書類など不要。本人確認が厳しくなっているとは言え、申請の時点で違法・問題行為の確証が無ければ閲覧は可能である。
2)実際に存在する業者であれば登記記録があるので、今回のケースのように他の自治体で問題となっているような業者でも、事実上、何ら問題無く閲覧が可能である。
3)架空申請や虚偽目的による申請など、問題となる事実が発覚した場合の対処策が不十分である。
<問題提起>
以上見たように、現行の運用では実効性のある対策とは言えず、犯罪が起こってからでは遅い。各地から報告されるケースを勘案すれば、民事上の被害に相当する事案はすでに起こっていると考えても不自然では無く、早急な対策が必要である。
また、今回調査したのは(旧)新潟市のみであるが、新潟の状況がクリアリングハウスの報告する全国実態と極めてよく符合していることから、県内の他の自治体でも同様の状況があると考えられる。全県的に注意を喚起すると共に、全国の先進事例などを参考に、原則非公開とするよう対策を取るべきである。
※なお、この調査は新潟市議会政務調査費(新潟市の補助金)を活用しました。

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