国民保護計画に関し、先日「緑・にいがた」で申し入れを行ないましたが、その回答が届きました。
予想はしていたけど、がっくし。いかにももっともそうに回答していますが質問に具体的に答えず、県としての独自の判断などひとかけらもない。論理矛盾もあちこち。まあひどいです。
まず、申し入れと回答は下記にリンクしてあります。
(注:設定の違いにより、ページが逆順になっていますが御了承下さい。後日修正します)
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「緑・にいがた」の緊急質問と申し入れ
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県の回答
以下、この回答の問題点を書いておきます。
■回答の問題点
1.質問に答えていない
例えば、戦時国際人道法の「どの規定が検討され、成案に盛り込まれたのか」という質問に対しては、「国の保護法は戦時国際人道法に沿って作られており」「法に沿って作られている計画は人道法に沿っている」と主張しているだけで、具体的には全く答えていない。
しかも「人道法に沿っている」と主張する部分は、「高齢者や子どもへの配慮」だけであり、これはそもそも災害一般に言えることで、実際、今回の計画のベースのひとつとなっている地域防災計画にももともと盛り込まれている項目だ。
わざわざ基本方針で「戦時国際人道法の確実か実施」を謳うならば、具体的な条項を明示し、踏み込んで記述されなければ、絵に描いた餅、どころか絵にもならない殴り書きである。
私たちは質問・申し入れ文書において、一貫して人道法の「文民保護」の最も基本的な考え方、すなわち「軍民分離」の方針とその具体策の明確化を求めると共に、その観点からすれば矛盾が随所にあると言うことを主張している。
しかし回答はその最も基本的な指摘についてあえて無視(別な言い方をすれば、回答できないため避けて通り)し、防災計画でも言われている当然の「高齢者や子どもへの配慮」をもって「戦時国際人道法の的確な実施」は事足れりとしており、こんないいかげんな仕事に私たちの大切な「保護」を任せることは絶対にできないと言わざるを得ない。
2.自衛隊等の施設の扱いについて
自衛隊や防衛庁施設について、国際法上も「攻撃を受ける可能性」があるという視点が欠落していること、さらに特に防衛庁情報本部所属の小舟渡通信基地がその存在すら記載すらされていないことについては、県の回答では「計画素案においては、自衛隊施設について、県が住民の避難など国民保護措置を実施する際に応援要請により出動する部隊及び総理大臣の命令により出動する部隊との連絡調整を図る必要があるため」「多数の部隊人員が駐屯する駐屯地等の所在を第一編第3章に記述」した、としている。
全くお笑いである。この回答は矛盾と欺瞞、言い訳に満ちたものとなっている。
まず、私たちはそもそもこれら施設が、戦時国際法の観点から言っても「攻撃を受ける可能性」が高いというについて問題意識や視点がないことを指摘し、この回答で言うような「自衛隊施設について、県が住民の避難など国民保護措置を実施する際に応援要請により出動する部隊及び総理大臣の命令により出動する部隊との連絡調整を図る必要」という素案の観点自身が問題だ、と言っているのであって、「協議会でこういう方針で書いたのだから問題ない」というのは、問題のすり替えというか、すり替えにもならない稚戯に等しい。
また、回答では、やはり私たちの指摘通り、自衛隊等の施設は「避難のため出動」もしくは「(侵害排除のための)出動」という観点しかないことが、あらためてはっきりした。この点は、繰り返して述べるが、軍事施設への攻撃を容認している「戦時国際法」を考慮していない決定的証拠である。
その上で、回答は「なお、自衛隊施設、米軍施設等の周辺地域の住民を含む県民の避難については、国及び地方公共団体が平素から緊密な連携を図ることとされていることから、地域の実情に応じた具体的な避難の実施等について検討を深め」るとある。
これは苦し紛れの回答の結果、彼らの矛盾がより明確にあらわれたものとなっている。
「平素から緊密な連携を図る」ので周辺住民の避難について書く必要がないならば、そもそも「平素から連携を図っている」のだから「出動のため連絡調整を図る機関」として書く必要すら無いではないか。
また、「多数の部隊人員が駐屯する駐屯地等の所在を記述」したとされているが、記載された海上自衛隊新潟基地は小舟渡通信基地に比べて人員が本当に「多数」なのか?県はおそらく確認すらしておらず、「小舟渡通信基地」を書かない理由を必死に探したのだろう。
さらに、この自衛隊基地等が記載されている箇所は、回答でも述べられている通り素案の「第一編第3章」であり、これは「新潟県の地理的特徴」の章である。
「地理的特徴」とは、まさに自然構造物や人工施設の「特徴」のために、「国民保護」のために特に配慮しなければならない項目を扱った箇所である。国の機関との連絡調整などについては、ちゃんと他の章が用意されている。「地理的特徴」の中に自衛隊基地等を記載するとすれば、有事の際にそれがどのような影響を与えるかという観点で語られなければならない。百歩譲って「出動調整も地理的特徴」とする考えを仮に受け入れたとしても、少なくとも攻撃や危険性という「負」の側面についても明確にされる必要があるはずだ。
3.結局お役所仕事
実は、今回の申し入れで「お役所仕事」の「真骨頂」を見たエピソードがあった。
この申し入れの重要な要素である「防衛庁情報本部直属の超重要施設である小舟渡通信基地」の問題を指摘したところ、担当者は他の係官と顔を合わせ「あれは自衛隊施設じゃなかったよな」。
はい、確かに「自衛隊施設」ではない。もっと重要な「防衛庁情報本部」という秘密性の高い業務を行なっている超一級の通信基地だ。担当官は、消防庁のモデル計画で「自衛隊施設等」となっているため、「自衛隊」じゃなければ書かなくてOK、という判断しかしていないのだ。もっと重要な危険な施設なのに、モデル計画で想定されていなければ県の計画で記載しなくてOK、というのでは、ほんとに「保護」なんて考えておらず、「お役所」の「お仕事」としてヘマをやらないことだけを考えていると言わざるを得ない。この「想定外」の対応には、私たち一同開いた口がふさがらなかった。
「有事」の「国民保護」のための計画が、その必要性や是非の議論はあるとしても、結局、中身はこの程度のお粗末な検討しかなされていないことに、本当に落胆と恐怖を感じざるを得ない。

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