本日航空幕僚長を解任された田母神氏の参考人招致が行なわれた。
詳細はよくまだ聞いたり読んだりしていないが、僕が事前に友人たちに言っていたとおり、持論展開の格好の場になってしまった要素も大きいのでは。やっぱりねという感じだ。
田母神氏の主張は、「政府見解と異なる」ことが問題と言うより、そんなレベルにも達しない、およそ「論文」と呼ぶに値しないそのへんの三文小説レベルの市販の文庫本などの主張をつまみぐいして作ったような代物で、「まじめなネット右派」からもあまりの粗末さにあきれられているような中身だ。(右派からの批判もネットで検索すると結構見つかる)
そんな奴を国会に招くなんて事はよしたほうがいいのにと思っていたら案の定だ。「議論かみ合わず」と夕刊に書いてあったけど、相手がそういうレベルの人間なんだからあたり前の話だ。かえって国会の見識が疑われるとさえ僕は思う。
僕自身は、もちろん将来的に軍隊の廃止や戦争の無い社会を望む者ではあるけれども、かつての戦争の経緯や背景の見直しはいくらでも別の場できちんと論じられて大いに結構と思うし、また、一般論として、日本に限らず、ものごとをきちんと考える「軍人」が、時の政治に左右されず、確固とした信念を持つことは(危険な側面もあるが)ありうる事だと思う。
例えば、アメリカの軍出身のパウエル元国務長官がイラク戦争の開戦に反対していたことはよく知られている。また彼は、イラクの日本人人質事件の際も、当の日本政府が「自己責任論」を声高に叫ぶ中で、「日本人は(人質となった)若者たちの勇気ある行動に誇りをもっていいのでは」という趣旨の発言をした。共和党にもかかわらず、今回の大統領選でも民主党のオバマ氏を支持した(もちろん、後二者の言動は軍人をやめてからの発言だから単純には論じられないが)。
イラク戦争の際、ヨーロッパの複数の国の軍幹部も戦争の不当性に抗議して辞任した。
日系のアメリカ軍中尉エレン・ワタダ氏も、イラク戦争参戦に拒否し軍法会議にかけられている。
それぞれ、信念と確信あってのことだ。
戦争で人の命を預かるというリアリティの中で培われた、「右」とか「左」ではない、いい意味でも悪い意味でも、ある種の究極の合理性のようなところから来る信念と、今回の田母神氏の稚拙な論文や行動は、どう考えても天と地ほどの差がある。
あんな主張は問答無用、むしろあのような低レベルの主張をまじめに論じる人を幕僚長に任命した安倍元首相や、おそらく実質的な人事配置を指揮した守屋氏あたりを参考人招致し、その見識を徹底的に問うことこそ必要なことだったのではないか。
田母神氏も真面目で冷静な右派から見て情けないんだろうけど、単純に「本人を参考人招致!」と盛り上がった野党も少々お粗末だったのではないか。もっと決定的な何か不正証拠などをセットにして追及できれば別の話しだけど。

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