いろいろ波乱があった末、議会で標記意見書が全会一致で採択されました。
先日報告した通り、僕が意見書案を提案、その後市民連合(社民系会派)も提案し、両者で一本化調整を図り、各会派への働きかけを続けました。保守系会派も賛成の意向を示してくれたため、焦点は東北電力出身社員が代表を務める民主会派の動向。その後他の各会派からもおおむね賛同が得られたため、民主もやむなく賛同することに。
全会一致が確実になりましたが、共産党が積極立場から賛成討論をおこなう意向が示され、一方、民主会派も共産党とは逆の意味で、賛成討論の意向を表明。ぬぬ、きっと電力会社出身の立場から批判的な意見や原発の一定の役割を主張するに違いない、と考え、僕も急きょ賛成討論の意向を表明。
順番も会派の大きさ順で共産党→民主となるので、批判的な立場から言われっぱなしにされたら沽券にかかわると言うものです。
以下、意見書と私の賛成討論を貼り付けます。
まず、採択された意見書
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原子力推進政策の見直しと発電所の安全対策強化等を求める意見書
福島第一原子力発電所は,東日本大震災による地震と大津波の影響で全電源が失われた後に,冷却水の喪失から水素爆発や炉心溶融などの深刻な事態が続き,さらには大量の放射性物質の環境中への放出など,史上最悪の事態に陥り,影響は関東や本県も含め,広範囲に及んでいる。
また,深刻な放射能汚染を受け,周辺地域には広範囲に避難指示が出され,多くの住民が避難生活を余儀なくされているほか,農作物の汚染や風評被害も深刻化している。
今回の原子力発電所の事故は,立地地域住民のみならず,日本全国どこでも一たび事故が起きれば放射能による被害の危険性があることを示している。
柏崎刈羽原子力発電所から約40キロメートルから80キロメートル圏内に位置する本市に暮らす市民にとっても,不安は極めて大きいものがある。
よって,国は,福島第一原子力発電所の事故の一刻も早い収束と原因究明はもとより,国内すべての原子力発電所の周辺住民の安全,安心を確保するため,次の事項について,特段の措置を講じるよう強く要望する。
記
1 今回の事故原因の詳細な調査を踏まえ,福島第一原子力発電所の事故の一切の情報を国民に開示すると同時に,住民への説明,広報の充実強化を図ること。
1 原子力発電所の機器の健全性や立地付近の断層などを徹底的に点検し,耐震設計審査等の安全指針について見直すとともに,抜本的な対策を講じ,国民の安全,安心の確保に努めること。
1 国の防災基本計画や原子力防災指針等の見直しを早急に行うこと。特にEPZ(防災対策重点地域)の範囲を大幅に拡大するとともに,事故の際には汚染の実態を速やかに公表し,EPZ圏外の地域の住民の避難や安全確保についても柔軟にかつ緊急に対処できるよう体制を整えること。
1 原子力推進政策を見直し,再生可能エネルギーにシフトする取り組みを強めること。
1 今回の事故による風評被害を防止し,特に輸出品や観光などへの海外からの懸念を払拭するよう万全の対策に努めること。
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成23年6月28日
新潟市議会議長
藤田 隆
送付先:
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
文部科学大臣
厚生労働大臣
農林水産大臣
経済産業大臣
東日本大震災復興対策担当・内閣府特命担当大臣(防災)
内閣官房長官
原発事故の収束及び再発防止担当大臣
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次に、僕の賛成討論
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先に私が一般質問でも述べた、西暦の869年に起きた貞観地震による津波について、(今ほど討論に立った)渡辺和光議員の出身企業でもある東北電力は、1990年に調査をおこなっている。女川2号機はその検討を踏まえ津波想定の高さを9・1メートルとして対策をとり、こうした歴史の教訓を無視した東京電力とは対照的に、被害は少なく抑えられた。原発自体に私は反対だが、あらためて渡辺議員を前にして、こうした対策については一定の敬意を表した上で、以下賛成理由を述べたい。
●まず、渡辺議員が述べていた日本の企業の生産拠点の国外移転については、(電力が安定しないとか料金が高くなるからというよりは)、むしろこの間の経済のグローバル化による要素の方が大きいのではと考える。
●ただちに自然エネルギーに全て転換できないのは言うまでもない。しかし、だからと言って原発が絶対に必要だという結論にはならない。
原発が必要とされる根拠であるエネルギー需給見通しは、今後の経済成長を実態以上に大きく見込んでいる。しかし実際には、この数年の電力需要は横ばいか、あるいは不況の影響もあるとはいえ減少しているのが実態。
一般質問でも触れたとおり、2003年には、東京電力の保有する17基すべての原発が長期にわたって停止したが、電力不足は起こらなかった。また、(事故を起こした)東京電力は揚水発電の活用によりこれまでより供給見通し量を増やし、現在5520万kWとなって、7月末段階の見通しですでに不足なし−となっている。原発は全国で54基中17基しか動いておらず、現状は原発に依存しなければこの社会が立ち行かなくなるわけではない。
原発が電力供給に占める割合が2割から3割というのも、実際は出力調整の難しい原発をフル稼働させ、他の火力や水力を調整して対応しているに過ぎず、他の電力をフル稼働させれば、逆に計算上は原発なしでも需要を賄える。当面は原発の2倍の熱効率を持ち、CO2排出の少ないコンバインドLNGなどの活用で対処できる。実際、最新の火力発電所はほとんどがLNGを採用しており、。2009年度実績で国内の発電量のうち原発を上回る約31%を占めている(これに対し、石油はすでにわずか約6%)。今後このLNGが大きな役割を果たす。その調達については海外にある程度依存しており、不安要素もあるが、その意味で市長が答弁で繰り返し述べていたように、LNG基地を有する本市の役割も重要になっていく。
●埋蔵金ならぬ埋蔵発電といわれる自家発電も全国で6000万kWある。これに加え、ソーラー、風力、小型水力、バイオ、地熱発電、潮力、コジェネなど多様な再生可能なエネルギーを、さまざまな事業主体が発電事業や配電事業にも参加できるようにすることは先進国の常識だ。小規模分散型の電力体系を拡大することは市民参加型、地方分権、地方自治、地域自立経済などの点でも重要。こうした電力の供給の障壁となっている割高な送電線使用量を下げれば、経済は活性化され電力不足も解消できる。
●再生可能エネルギーに充分な予算をつけ、拡大すればコストも下がっていく。日本の原子力関連研究開発予算は26億ドルと巨額で、米国やフランスは7億ドル以下。お湯を沸かしてタービンを回すだけの原発というシステムに、いかに巨額の予算が投じられてきたか。一方、再生可能エネルギー予算は全体のわずか5%。
ドイツなどで再生可能エネルギーの拡大を進めてきた政策枠組みが固定価格買い取り制度。わが国では政局の混乱により暗礁に乗り上げているが、まさに、電力問題は政治政策で転換が可能であり、政治主導が求められている。
●今回のような深刻な事故のリスクは言うまでも無く、原発の巨大で複雑なプラントの建設、危険な放射性廃棄物とその管理のために要する膨大なコストも無視できない。また、国外にも視野を広げれば、オーストラリアなどの広大なウラン採掘現場での自然破壊や住民への被害も大きな問題になっていることも見る必要がある。
●最後に、節電や再生可能エネルギーへの転換は窮乏社会を意味するものではなく、より生活に密着した、持続可能な産業の育成と新エネルギーの開発と普及を軸にした新たな雇用創出や産業・経済構造の転換などを通して、将来にわたって私たち自身やこれからの世代が安心して暮らすことのできる社会の展望へと道を開くものだ。私たちだけでなく、将来世代にわたって、質素でも心豊かに、安心して暮らせる持続可能な社会を創るため、政治主導を実現していく政治家のひとりひとりとして、確信をもって意見書に賛成くださるようお願いしたい。
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