今春、文科省の指示で全国の学校現場での体罰に関する調査がおこなわれました。
一般の市町村は都道府県の教育委員会(または教育庁)が調査しますが、政令市は市の教育委員会が職員の採用や管理を担当するため、市教委が調査します。
新潟県、新潟市のそれぞれの調査結果が5月1日に公表されています。
→新潟市
→新潟県
下記は、この公表結果を僕がグラフにしたものです。
赤い色の「体罰」と認定された率は若干異なっていますが、母集団の数が大きく異なるので、この違いにはおそらくあまり意味がないと思います。
問題なのは、県が「体罰」「不適切」「該当しない」と分類しているのに対し、新潟市は「体罰」「該当しない」と単純な分類しかしていないことです。
つまり、体罰と認定されたケース以外は「適切な指導」のもとでおこなわれたと認定していることになります。
「該当しない」に分類された(つまり「適切な指導」)の範囲に含まれた報告内容(公開されていませんが資料を取り寄せました)を見ると、例えば
・「休み時間 喉もとを押してドアに頭を押し付けた」
・「部活動中 グラウンドで30分くらい立たせたまま説教」
・「体育の授業中 授業中ふざけていた生徒を中止したが,指導に従わないので取り押さえ頭突きをした」
・「部活動中 プレーがうまく出来ない生徒をバドミントンのシャトルの筒で頭を叩いた」
・「放課後(行事の歌の練習)歌の練習をしていた時,ふざけていたら首をつかまれた。まだ,遊んでいたら転ばされた。その後逃げようとして足を引っ張られた。」(児童3名からの訴え)
などがあります。
議会の一般質問の際、僕の質問に対して教育長は「一定の基準に該当するかどうかを明確に判断し、グレーゾーンは設けなかった」と答弁しました。
しかし、例えば、分野は異なりますが、重大な事故の背景にはその約30倍の軽微な事故があり、その背景には約100倍のヒヤリハット事象があるという法則があるとされています(
ハインリッヒの法則)
体罰も同じではないでしょうか。行政上の明確な基準で認定される「体罰」の背景には、その基準を満たしてはいなくても教師の抑圧的な言動や態度、そしてそれがまかり通る雰囲気があるはずで、新潟市の調査ではそうした実情が見えて来ません。
今回の調査の目的は、隠れていた体罰を探り出して単に「一定の基準」で認定して処分して終わり、というものだけではないはずです。
基準を満たして「体罰」と認定された行為の背景や実態に迫ることこの方が重要な意義があるのではないかと思います。
その意味で、県の調査に比べて新潟市の手法や対応は不充分で問題があると思います。そもそも政令市になぜ教職員の採用や管理も含めて一般の市町村よりも大きな権限があるのか、それは大きな財政・行政規模があって、県のバックアップが無くとも自律的に教育行政を進めることが期待されているからであり、その意味ではむしろ一般の市町村よりも積極的な今日行く行政が期待されていると言えます。
にもかかわらず、結果的には県が調査した一般市町村よりもアバウトな実態把握しかできていないことになります。
さらに問題なのは、議会の質疑でも「体罰は絶対にあってはならないこと」としていながら、処分は「訓戒」というもので、いわば口頭注意的なもの。履歴の記録にも残りません。この程度の処分は、例えば処分を受けた職員が裁判で「不当な処分を受けた」と申し出ても、「処分自体が真の処分ではなく、訴えの利益が無い」として退けられる程度のものなのです。
問題だ、と僕は思います。

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