去る10月17日に「新潟市『農業特区』で何ができる?どうなる?」を開催、関心を持つ市民、農業従事者、それから国会で農地法改革議論に関わった近藤正道・前参院議員も含め20数名が参加、活発な議論を交わしました。
まず中山から、農業特区の背景としての「国家戦略特区」の問題や論点についてレポートしました。
安倍政権の「国家戦略特区」は小泉政権・菅政権それぞれで進められた「特区」構造よりも踏み込んだ形で、「投資」に焦点を当てた政策で、地方分権や国民生活は後景においやられており、中央集権型で、旧来の民主主義の枠外で事が進められていくなど、大きな問題や論点があることを報告。
次に新潟市の担当者(産業政策課と農業特区・農村都市交流課)から農業特区構想や新潟市における推進体制について報告。
これらを受けて、小千谷市在住の堀井修さんからお話し。

↑堀井修さん
農村の現状、企業参入の問題などを触れた上で、「特区構想に『集落』や『家族農業』の視点はあるのか」「農村は確かに高齢化しているが、『じいさんばあさん』はまだ元気だ。村でつくった笹団子やたくわん漬けはおいしく、防腐剤も入っていない。でも食品衛生法上はひっかかるので外では売れない。百姓が元気になるような『規制緩和』を考えるべきではないのか」などと問題提起。
参加者を交えた質疑や意見交換では、冒頭、市内の農業従事者から「企業が参入してくるのは迷惑」「何の役にも立たない」といった厳しい意見も。
また、養鶏業を営む参加者の男性からは、かつて養鶏業に水産業関係の大企業が参入し価格破壊、中小養鶏社の多くが廃業、その後養鶏業自体が不振になり、参入した大企業も撤退していったエピソードなども紹介されました。
一般の参加者からも、参入した企業がうまくいかなくなって撤退した場合はどうなるのか、農地が荒廃する懸念はないのか、といった質問が寄せられました。
新潟市の担当者からは、まず、企業(農業法人)の撤退時の心配については現在でも一定の規制があって農業委員会を介して調整が図られ、次の利用者に権利移転されうること、それもうまくいかない場合は最終的には国が買い上げて次の利用者の登場を待つスキームもある(ただし、そこまで行くケースは今のところないそうです)ことなどが説明されました。
さらに「特区のメニューである農家レストランは、もともと集落の新鮮でおいしい生産物をそこで販売し農村の活性化につなげたい想いで提案した」「現在、新潟市が窓口となって、特区に関係する事業に参入の意向のある企業の申請内容を検証しているところだが、例えば地元の若い生産法人と共同で取り組むような提案もある一方、実現性に乏しい提案や売名行為的なものと疑うようなものもある。地元の農村の発展につながるような事業を育てていきたい」と明言。
こうした議論を受け、新潟市担当者の姿勢と決意を生産者の方々も評価し、「その立場でがんばれ」と励ます場面も。
市長のパフォーマンス的側面や経済界の参入など「黒船」的な問題が大きくクローズアップされて議論される側面もありますが、市の現場の担当課の姿勢は多くの参加者も理解しました。
しかしその上でなお、国家戦略特区自体は内閣と経済界主導で構想され、今後もその枠組みで進んでいきます。
規制緩和の具体的なメニューを決めるのは国会の関与しない「諮問会議」という機関で首相が指名する経済界などから参加、各特区での具体的な計画を進めていくのも地方議会の関与しない「区域会議」という小人数のメンバーで、事業を進める事業者が一員。
新潟市としては、区域会議の窓口となって事業者の事業受付を行なう中で、先に述べたように地域事情を配慮するよう対応するとのことです。
また、法定の区域会議の下に自治体独自の任意の会議を設置、地域事情に配慮した計画の推進を考えている形となっています。
↑推進体制の図。赤い破線(中山が書き入れ)の上は法定の機関、下は新潟市設置の機関。新潟市が設置した「推進協議会」がどこまで地元事情や意向を反映できるかが今後の焦点のひとつ。
中山も議会で、推進協議会などに農業関係者の意向が十分反省されるよう意見を述べています。
国や経済界の意向だけを優先するのではなく、地元の事情の配慮や地元農業の発展のためという新潟市の姿勢がどこまで保障され担保されるのか、今後も注視が必要です。
詳しいやりとりや質問のある方は中山nakayama@jca.apc.orgまでお寄せください。

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